この参考書のレポート

合格  名古屋大学 教育学部

レポート数 9

フォロワー数 7

総合満足度
5
  • わかりやすさ
    5
  • 見やすさ
    5
  • 使い勝手
    4
  • 使い始めた時期
    高校卒業後 ・4月
  • 使用期間
    1年以上

使い方レポート

考え抜かれた内容構成! 大ベテランの技が輝く超注目作。

 ついに出ました!望月先生の古文読解系参考書!!

 『望月光のセンターはこれだけ! 古文』(文英堂)以来、筆者(あべ)が心待ちにしていた代ゼミの伝説的古文科講師・望月先生が執筆なさった、本格的な“古文読解系参考書”です。
 早速ですが、こちらも、先日レビューした『望月光の古文単語333 (超基礎がため)』に続いて、注目作になりそうですね。

 以下で、本書の特徴を概観していきましょう!

1.コンパクトに多彩な知識を習得可能!
 まずは、“255ページ”という類書と比べて限られた紙幅の中で、
「古文読解の基本」→「古文読解用の助詞(文法知識)の解説」→「文学作品常識」→「古文常識」→「和歌の読解法」
という、広範かつ多彩な古文読解の内容を“教育的な工夫”に満ちた緻密な配列で紹介しています。

 類書では、薄めの古文読解系参考書の場合、紙幅の関係上、「古文常識を省く・最小限にする」とか「文学作品常識を前述と同様に扱う」といった措置がなされることが多いのです。

 一方、本書では、「教室シリーズ」の美点である「余白や柔らかい挿絵が多い“余裕ある紙面構成”」を保持しつつ、内容を取捨選択して、一冊で古文読解に必要な様々な要素を学習できるように工夫されています。

2.これぞ学参の鑑!“引き算・掛け算の美学”が実現された一冊
 さて、1に関連して、ひと言ご忠告があります!
 正直に言えば、紙幅の限定のある中で多彩な項目を扱う訳ですから、より高い完成度を目指すという観点で言えば、「必要最低限だ」とか「内容が不足している」と感じる部分が散見されることは否定できません…。

 特に、「登場人物の動向を的確に把握する」という観点では本書には不安が残ります。
(上述に関しては、同旺文社の山下幸穂氏(河合塾)の『古文読解演習ドリル』の方が明瞭かつ効果的な記述が見受けられますね!)

 とはいえ!!(ここからが大切です!本段はいつもと違ってここでは終わりません。)筆者(あべ)は、何度も本書を読み返すうちに、これも“本書の狙い”ではないかという結論に行き着いたのです。

 さて、一般論を言えば、「古典には時間をかけていられない」という巷の大多数の高校生・受験生の意見があることは紛れもない事実です。

 そんな声をしっかりと捉えながら、「つまみ食い」的ではありながらも“古文攻略の王道”と称すべき“多彩で複合的な古文の知識の運用”の重要性を着実かつ効果的に経験させていく本書。

 これは、読み返すうちに、
・「学校・予備校の授業や読解問題集での経験を積む中で、古文常識などの知識面に関しては十分に拡充されて、入試を迎える時点で古文攻略が達成されている」
という
・「本書からはじまり完成される“本質的な学びの連続的経験”」
とでも表現すべき「優れた教育的配慮」があることが、「はじめに」を読んでも、紙面のあちこちからも、アリアリと伝わって来るようになったんですよね。

 まさに、古文だけに、「先達はあらまほしきことなり。」(『徒然草』より)を体現する一冊になっていますね!

 「王道の“要所要所”を的確に案内しつつ、“良い意味”でこの一冊では“学習が完了しない参考書”」という、「“引き算=内容の取捨選択”」と「“掛け算=多彩な項目の複合的な利用”」の見事なバランス感覚での書籍化。

 「なるほど!こんなコンセプトの学参も最高だな!!」と、あべが新しい発見をさせられた、これまた“脱帽”の望月先生の一冊です。

3.「助詞をないがしろにしない」という執筆態度
 さて、本書で取り上げられる“解説内容”の面で特筆すべき項目を一つ上げるとすれば、それは標題の通り、「助詞をないがしろにしない」という望月先生の執筆態度です。

 途中に出てきますが、「掲載する文法事項を絞るべき」という提案をなさった編集者の江尻氏と、そのアドバイスを真摯に受け入れ、中でも「助詞」を採用された望月先生のご英断は、まさに本書の輝きを一気に高めることとなったと思います。

 特に、平成20年代以降の古文の読解指導において、高校や予備校を問わず、時間的制約から「助詞を体系的に扱わない」という授業が多く見られます。
 
 それ故に、「古文読解に絡めて、助詞だけを効果的に学べる学参が出ないかな?」と思っていた矢先の本書でしたから、実にありがたい一冊ですね。

 望月先生は明確に「アウトライン」を示し、「学びへの道標」をきちんと提示していたわけですから、出会えるかは運任せの「場当たり的指導」とはまるで違います。

~古文読解参考書の新定番現る! 皆さんも本レビューをご参考にどうぞ~

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最終更新:2019.10.01