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日本史「文化史」の勉強法 ~大学受験で差がつく文化史用語の覚え方~

2021.08.17

大学受験の日本史において重要な分野の1つが「文化史」です。しかし、たくさんある「文化史」用語をどれくらい覚えると良いのか分からないという人や、「文化史」が苦手という人もいるのではないでしょうか。
大学ごとに「文化史」の出題頻度は様々ですが、ここでは出題傾向を分析した上で、「文化史」の中でも特に重要な「信仰」「学問・思想」「彫刻」「建築」「文学作品」の5つのジャンルについて、効率的で具体的な勉強法を紹介します。

1. 日本史における「文化史」の重要性

1-1. 大学入試での「文化史」出題傾向

大学受験で日本史を勉強するにあたり、政治史を中心に勉強を進め、「文化史」を後回しにしているという人も多いのではないでしょうか。こうした傾向に反して、日本史における「文化史」はとても重要な分野の1つであり、重点的に勉強すべきポイントでもあります。また、大学受験での出題頻度も高い分野です。
過去の事例を見てみましょう。2021年共通テスト第1日程の「日本史B」では、第2問で「文字使用の歴史」について、第4問では「儀式や儀礼」について扱っており、全6問のうち2問が「文化史」での出題となっています。また第2日程では第6問で「食文化」について出題され、その他の大問では政治史と文化史を関連させた内容も問われています。さらには、政治史がメインとなっている大問でも、文化史に関連する選択肢が入っているケースも多数見受けられました。
このような共通テストでの内容の比重を見ても、「文化史に関連した問題を確実に得点できるようにする必要がある」ということがわかると思います。
各大学の個別試験でも、「文化史」は必ず押さえておきたいポイントと言えるでしょう。国公立大でも私立大でも、政治史が中心に出題される一方で、「文化史」も必ず出題される分野だからです。
例えば、2021年の大阪大学前期日程では、4つの論述問題のうち1つは文化史が出題されています。また、2021年の青山学院大学の問題では3つの大問のうち1問が全て文化史での出題となっています。
もちろん大学ごとの傾向はそれぞれ異なるので、自分の志望大学の過去問を丁寧に分析する必要はありますが、全体的に見て「文化史」は確実に得点すべき分野ということがわかると思います。苦手としていると、入試本番でライバルに差はつけられないでしょう。

1-2. 「文化史」はどこまで覚えるべき?

大学受験における「文化史」の重要性が理解できたとしても、「膨大な文化史用語をどこまで覚えるべきなのか」という線引きは非常に難しい点です。これは過去問などを分析し、自分に必要なレベルを見極めた上で判断する必要があります。
まず、共通テストレベルの場合は教科書の内容を完全に覚えると良いでしょう。教科書では覚えるべき用語は太字になっていますので、まずはそれらを完璧に覚えるところから始めてください。
文化史は用語を暗記するだけでは長期的に記憶を定着させることができません。教科書の本文には用語の説明がシンプルかつわかりやすく記されているので、あわせて覚えるようにしてください。
また、二次試験の対策をする上でも、まずは教科書レベルの内容は完璧に覚えましょう。最難関レベルの大学を除くと、発展レベルの内容を覚えていなくても対応できる場合がほとんどです。
次に、教科書レベルの内容が定着した人は、自分の目指すレベルの問題集を1冊解いてみてください。その時に間違えた箇所は徹底的に覚えるようにします。何周か解いてみると自分の苦手分野がはっきりするので、適宜復習をしながら学習を進めると良いでしょう。
二次試験では時々聞いたこともない内容が出題されることもあります。しかしこのような内容は解けなくても大丈夫です。たまに出題される突飛な内容のために時間を割いて勉強するよりも、出題率の高い内容や苦手分野の勉強に力を入れる方が得点につながりやすいでしょう自分が持っている知識を組み合わせることで解ける場合もありますが、試験本番は時間との勝負でもあります。そのためにもすぐに知識を思い出せるようになるまで繰り返し問題集を解いてみてください。

2. 日本史「文化史用語」の覚え方

2-1. 各文化の特徴をプロファイルする

まず初めは、細かい用語を覚える前に「その文化の担い手・中心となった場所・背景・特色」を確認しましょう。その当時の政治的背景や経済の状況などが文化に与える影響は大きく、文化ごとに異なる特徴が表れているので、教科書などを使って確認してみましょう。
例えば、7世紀初頭から8世紀初頭に栄えた「白鳳文化」は、以下のようにプロファイルすることができます。

天皇や王族、貴族が担い手となり、飛鳥や藤原京を中心に発展した文化である。当時は律令国家が形成され、また国を挙げて仏教興隆を促進したこと、さらに遣唐使を通じて初唐文化が流入してきた影響により、仏教文化が発展し、また地方にも拡大した。加えて唐以外にも高句麗やインドなどの文化の影響も受けている。

このように、各文化の特徴をまとめてみるのも良いでしょう。その時代に起きた政治的事件や中心人物とセットで覚えると、文化史の流れを把握できますし、かつ思い出しやすくなるのでおすすめです。
さらに大学入試では、文化財の写真を時代順に並べ替える問題も見られます。「時代ごとに文化の特徴を紐づけながら覚える」ことが、非常に重要であることがわかるでしょう。

2-2. 資料集や授業を有効活用する

また、「文化史」を勉強する時に欠かせないのが「資料集」です。教科書では主に文章で解説されていますが、「文化史」の勉強では、写真などのビジュアルで文化財そのものを確認する必要があるからです。
試験で文化財の写真をもとにした問題が出題されることも多いので、授業などで新しい「文化史」の用語が出てくるたびに資料集で確認してください。別のものとそっくりな文化財が登場した時には、それぞれの特徴もあわせて学習しましょう。「資料集」で視覚的に学習することで、記憶に残りやすくなるだけではなく、格段に理解も深まります。
最後に「文化史」を勉強する上で最も重要なことは、「授業内容をしっかりメモする」ということです。
学校や塾・予備校の授業では、先生が用語を紹介するだけではなく、時代背景の説明や、時には印象的な豆知識まで紹介してくれるケースもあると思います。その文化が栄えた背景や人物の経歴などは、文化史を覚えるだけではなく、理解する上で重要なポイントになります。用語を覚えるコツを教えてくれた時なども、忘れずにメモしておきましょう。

3. ジャンル別の効果的な覚え方

ここからは「文化史」の各ジャンル別に、効果的な覚え方を紹介します。

3-1. 仏教などの「信仰」

「文化史」を勉強する時に最も重要な分野は、「仏教などの信仰」であると言っても過言ではないでしょう。
日本史では様々な宗教や宗派が誕生し、信者を獲得しながら拡大します。「浄土宗」と「浄土教」など、似ている名前の宗派が出てくることもあるため、混乱してしまうケースも多いのではないでしょうか。しかし、試験で出題されることも多い分野ですので、要点を押さえて確実に暗記できていれば得点源になります。
信仰の歴史の中で特に重要なポイントとなるのは、以下の5点です。

  1. 平安仏教
  2. 鎌倉新仏教
  3. 室町時代の各宗派の動き
  4. キリスト教
  5. 宗教政策

(1)平安仏教
平安時代の弘仁・貞観文化の中で、「天台宗」と「真言宗」という2つの宗派が影響力を持つようになります。似ている部分が多いことが特徴でもありますが、間違えて覚えることのないように表を作りましょう。資料集などに既にあるものを活用しても良いですし、あえて自分で書いてみるのもおすすめです。教義や著作、本山の場所を並べて書くことで頭の中を整理することができます。
また「天台宗」と「真言宗」が開かれるまでの経緯を押さえておくと、より理解を深めることができます。2つの宗派には共通点が多くあるので、忘れずにチェック。「天台宗」と「真言宗」は後の時代の仏教や学問などに大きな影響を与えているので、確実に押さえるべきポイントです。

(2)鎌倉新仏教
仏教は鎌倉時代に大きな変化があり、新たに6つの宗派が誕生します。まずは「宗派の名前・開祖・教義・中心寺院・著作物」を覚えましょう。特に、「教義」は各宗派の特徴を理解することができるので、確実な暗記に繋がります。この時も表を活用してみてください。「念仏・題目・禅」の違いも理解できているとなお良いでしょう。
一方、「法相宗」などの旧仏教の内容も忘れないでください。新仏教も旧仏教も出題頻度がとても高い内容なので、定期的に復習しましょう。

(3)室町時代の各宗派の動き
鎌倉新仏教は、室町時代に大きく発展することになります。特に「臨済宗」は幕府に保護されていたこともあり、「五山・十刹の制」を整えるなど、影響力を持つようになります。「臨済宗」以外の宗派も各地で布教活動を活発化させています。各宗派がそれぞれ異なる動きをしているので、混乱しやすい箇所ではありますが、1つずつ丁寧に覚えるようにしてください。

(4)キリスト教
室町時代後期になると「キリスト教」が伝来し、発展します。初めは織田信長に保護され西日本を中心に信徒を増やしていましたが、徐々に「キリスト教」は禁止されるようになり、取り締まりの対象となりました。しかし「隠れキリシタン」という言葉があるように、日本国内で途絶えることなく信仰されていたため、室町時代後期から「キリスト教」の歴史は続いています。
さらに明治時代以降は「キリスト教」が黙認され、新島襄や内村鑑三などのキリスト教徒が活躍している場面もあります。日本史では仏教だけではなくキリスト教も影響力を持っていたので、一連の流れと用語は確実に暗記するようにしてください。

(5)宗教政策
最後に、日本史における「宗教政策を中心とした信仰の歴史」を確認してみましょう。
信仰の歴史は政治の影響を強く受けています。古代の一期間では「鎮護国家」の思想が重視され、天皇が仏教関連の詔を出すなど政治において仏教は欠かせないものでした。また近代では、「神道国教化」政策を打ち出すため「神仏分離令」を出したところ、「廃仏毀釈運動」が発生するという場面もありました。時代が移り変わるにつれ宗教観も変化しています。試験でも重要なポイントとなるので、しっかり覚えるようにしてください。

3-2. 江戸時代以降の「学問・思想」

受験生を混乱させる分野の1つが「学問・思想」であると思います。元禄期に「儒学」、宝暦天明期には「国学」や「洋学」、化政期の「水戸学」などがあり、様々な学派や学者の名前を覚えなければなりません。
まずはそれぞれの学派の特徴と最重要人物を確認し、著書もあれば一緒に覚えましょう。教科書や資料集で太字になっている人物がそれに該当します。師弟関係や親子関係であるため苗字が同じ人物がいますが、時代順に覚えましょう。
また、歴史学や国文学などの細かい分野も忘れないようにしてください。さらに学者として政治を行った人物もいます。政治史の流れと関連させながら覚えるとより効果的でしょう。

3-3. 仏像などの「彫刻」

仏像を覚えるときは必ず資料集を活用してください。特徴的な仏像は画像のみで出題されることもあるからです。
画像で確認する時は、それぞれの仏像に自分で特徴を見出すことがポイントです。手に持っているものや足の組み方、立像や座像、表情などです。資料集に画像つきで掲載されている仏像は出題頻度も高いものばかりですから注意深く観察してみてください。
また仏像の名前にも着目しましょう。例えば「東大寺僧形八幡像」は、「僧」が仏教、「八幡」が神道に関連する言葉であることから、神仏習合の影響を受けているということがわかります。また「中宮寺半跏思惟像」の「半跏」は片方の足をもう片方の足の上に組んでいることを、「思惟」は深く考えていることを表します。
このように、仏像の名前を分解してみると仏像の特徴を見つけやすくなります。これは仏像に限らず、他の彫刻作品も同様です。作品名にはヒントがたくさん含まれているので、覚える時には画像と名前をセットにしてみてください。

3-4. 建築

寺院や城郭などの「建築」は、建造物の特徴だけではなく所在地も確認することが重要です。京都や奈良には寺院が密集しているため場所を覚えることは難しいですが、その場所に寺院があるのは政治的な理由も含まれていることがあるため、問題を解く時のヒントになるかもしれません。また寺院を覚えると、仏像の暗記とも関連付けることができます。
また、安土桃山時代に全国各地に建設された「城郭」も重要なポイントです。特に「時代が下るにつれ山城、平山城、平城、と城の機能も変化している」という点は必ず確認してください。

3-5. 文学作品

平安時代に栄えた「国風文化」では、たくさんの文学作品を覚えなければなりません。この時重要になるのは「内容」です。その作品が「物語」なのか「日記」なのか、また何について書かれているのかも確認してみましょう。
「古文の授業で学習し、内容が記憶に残っているので日本史でもその作品はすぐに覚えた」ということはありませんか?――つまり、内容がわかっていれば覚えやすくなるのです。時間があれば実際に作品を読んでみてください。読む時間がない場合は、あらすじを確認しましょう。(物語文学の場合は、話の導入部分だけではなく結末も確認するとより効果的です)
大正・昭和初期には「反自然主義文学」「プロレタリア文学」「大衆文学」など、様々な文学の種類が登場します。作家や作品もたくさんあるため覚えるには大変ですが、まずは教科書に載っている作品を覚えてください。教科書レベルの用語を覚えていれば、基本的にはどのような問題にも対応できるはずです。それぞれの文学の特徴を押さえるとなお良いでしょう。

4. 日本史の「文化史」学習におすすめの参考書

「文化史」を学習する際は、基本的に普段使用している参考書に含まれている内容で十分ですが、「文化史が苦手なので集中して学習したい」という人におすすめの参考書を紹介します。

金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】文化史 金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】文化史
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金谷の日本史 「なぜ」と「流れ」がわかる本 【改訂版】 文化史』(ナガセ)
基本的な「文化史」の内容をこの1冊で身につけることができます。文章がわかりやすいため、読書をしているような感覚で読み進められます。
また重要な箇所が赤字などではっきりと書かれているため、覚えるべきポイントをすぐに確認できます。さらに、暗記の時に混乱しやすいポイントがまとめられていることも特長です。図などもたくさん掲載されているので、日本史が苦手な人でも手に取りやすい1冊です。

5. まとめ

最後に、日本史の「文化史」をマスターするためのポイントを振り返ります。
「文化史」を勉強していく上で押さえておきたい点は、次の3つです。

  1. 初めに「文化の担い手・中心となった場所・背景・特色」をプロファイルする。
  2. 文化史の用語を覚える時には資料集を活用し、文化財の画像も確認する。
  3. 信仰、学問・思想、彫刻など、各ジャンルで重要となるポイントを事前に把握する。

「文化史」は勉強を始めてから知識が定着するまで、時間がかかるかもしれません。しかしポイントを押さえて確実に覚えることができれば、大きな得点源になります。ぜひ今から、少しずつ「文化史」の世界に足を踏み入れてみてください。

StudiCoサポーター M.N.
青山学院大学 文学部史学科 合格