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【単元総まとめ】「熱力学」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書7選

2024.06.13

大学入試の「物理」でよく出題される「熱力学」の問題。特に〈気体の状態変化〉は頻出の単元です。
「解き方が分からない…」「状態変化の種類が多くて整理できない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
高校物理「熱力学」分野の特徴と勉強法、各単元のポイントをわかりやすく解説し、あわせて各学習段階に応じたおすすめ参考書も紹介します。

1. 「熱力学」のポイント

1-1. 熱と物質

熱力学ではよく、約-273℃を基準とした「絶対温度」を用います。1℃と1K(ケルビン)の間隔は等しいですが、間違えると計算結果が大きく変わってしまうので要注意です。
また、物質によって、温まりやすく冷めやすい物質、温まりにくく冷めにくい物質があるという、比熱熱容量に関するイメージを持っておきましょう。例えば鉄の比熱は約0.4[J/(g・K)]で、木材の比熱は一般的に約1.2[J/(g・K)]とされています。
比熱は数字が大きいほど温めるのに大きなエネルギーを必要とする、と考えてください。木は鉄と比べて3倍温まりにくく、冷めるのにも3倍の時間がかかると言うことができます。フライパンなど鉄の調理器具の持ち手に木が使われやすいのはこの性質によるものです。
また、一般に物質には3つの状態があり、融点にある物質を固体から液体に変えるのに必要な熱量を「融解熱」沸点にある物質を液体から気体に変えるのに必要な熱量を「蒸発熱」と呼びます。
温度は、物質を構成する個々の分子や原子の不規則な熱運動に関連しています。固体では規則正しく並んだ粒子が一定の位置を中心に穏やかに熱運動し、液体では粒子間の結びつきが弱くなり粒子が動いて少し活発な熱運動をします。気体では粒子がさまざまな速度で空間を飛び回り、固体・液体に比べて著しく体積が大きくなります。身近な例を挙げると、電子レンジは水分子をマイクロ波で振動させることで加熱します。

1-2. 気体のエネルギーと状態変化

熱力学の問題を解く上で忘れてはならないのが、次の「理想気体の状態方程式」です。
分子間力や分子の大きさが無視できる気体を「理想気体」といい、実在の気体でも常温・常圧の範囲では理想気体と考えます。
状態方程式では分子の平均運動エネルギーを考えて、気体定数をアボガドロ定数で割った「ボルツマン定数」を定めます。分子の微視的な運動に注目する方法は、力学の考え方を応用していますが、そのまま問題として出されることも多いのでしっかり押さえておきましょう。
以下の式で表される、物体の内部エネルギーについての式を「熱力学第一法則」といいます。
Qは「物体に与えられた熱量」、Wは「物体にされた仕事」です。

1-3. 気体の状態変化 ~ポイント解説~

熱力学第一法則をふまえて、それぞれの状態変化について簡単に解説します。

  1. 定積変化
  2. 定圧変化
  3. 等温変化
  4. 断熱変化

ここでは、系を常に熱平衡状態に保ったまま無限にゆっくり状態を変化させる過程(物理学の範囲では“準静的過程”といいます)を考えます。滑らかに動くピストンによって体積が変化する容器の中の気体に注目して、それぞれの変化を見ていきましょう。
定積変化ではピストンを固定したまま、気体に熱を与えていきます。気体の体積が変化しないので、気体は外部に仕事をしません。よって、与えられた熱量のぶん内部エネルギーが増加します。つまり、気体の温度が上昇し圧力も大きくなります。
定圧変化ではピストンを自由に動けるようにして、気体に熱を与えていきます。気体の圧力が変化しないので、仕事が圧力と増加した体積の積になります。熱力学第一法則から、内部エネルギーの変化量は仕事と熱量の和として求めることができます。気体の温度は上昇しますが、外部にした仕事のぶん温度上昇は定積変化の場合より小さくなります。
等温変化では気体の温度を一定に保つようにピストンを動かしていきます。気体の温度が変化しないので、内部エネルギーが変化しません。よって、与えられた熱量の分だけ気体は外部に仕事をします。内部エネルギーは一定のまま気体を膨張させるので、圧力は反比例して小さくなります。
断熱変化では気体に外部から熱が伝わらないようにして、ピストンを動かしていきます。容器が熱を伝えないような素材でできているイメージだとよいでしょう。熱の出入りがないので、気体がされる仕事のぶんだけ内部エネルギーは増加します断熱圧縮)。逆に気体が外部に仕事をする場合はそのぶん内部エネルギーは減少します断熱膨張)。
なお、「フェーン現象」は気体の断熱変化と深く関係しています。「フェーン現象」とは、湿った風が山を越えるときに風上の斜面で雨を降らせて、風下に吹き下る風が高温になるという現象です。
山に沿って空気が上昇する時、高度が上がるにつれ圧力は低くなり、気体は「断熱膨張」して温度が下がります。その時、水蒸気が凝結して潜熱を放出することで、乾いた空気になるのです。
一方、山に沿って空気が下降する時は、高度が下がるにつれ圧力は高くなり、気体は「断熱圧縮」され温度が上がります。この時、空気が乾いているので山を上昇する際に温度が下がった分より大きく温度が上がり、風下側は高温になるのです。

物理では、いくつかの気体の状態変化を組み合わせて元の状態に戻るサイクルを「熱機関」として考えます。熱機関の熱効率を求める際には、気体がする正味の仕事(p-V図でサイクルに囲まれた面積)を用いることに気を付けましょう。

2. 熱力学の勉強におすすめの参考書7選

2-1. 定期テスト対策レベル

宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版 宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版
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宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版
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鯉沼拓 為近和彦
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宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版』(学研プラス)

公式を分かりやすく説明するために図やイラストがふんだんに使われていて、「熱力学」分野を初めて勉強する際にも楽しく取り組めるようになっています。
別冊で問題集が付いていますが問題数自体は少ないため、物理現象や公式を理解するための参考書として使用しましょう。

 

漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試 漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試
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物理
漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試
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漆原晃
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改訂版 漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試』(KADOKAWA/中経出版)

公式の導出過程から問題を解くためのポイント、さらに演習問題を解説した構成になっています。特に問題を解くためのポイントは「熱力学」を押さえる上で重要な視点が簡潔にまとまっていて、問題を解けるレベルに至るまでの参考書としておすすめの1冊です。

2-2. 大学入試 基本問題レベル

漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版   漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版  
理科
物理
漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版  
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漆原晃
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漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座』(旺文社)

入試問題の頻出パターンをまとめ、どんな解法を使えばよいかがすぐ分かるように作られています。総合的な問題について解説されているので、演習を通して各単元の要素が絡んだ複雑な問題を解けるような力が身に付くでしょう。
公式についてはある程度定着していることが前提になっているので、「公式を覚えているけれど実際の問題を前にすると行き詰まってしまう…」という場合におすすめです。

 

物理のエッセンス熱・電磁気・原子 物理のエッセンス熱・電磁気・原子
理科
物理
物理のエッセンス熱・電磁気・原子
4.6
浜島清利/著
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物理のエッセンス熱・電磁気・原子』(河合出版)

シンプルにまとまった図と丁寧な文章で例題が解説されているのが特徴です。始めにまとめられている解法の見通しを意識しながら、解法を身に付けるのがおすすめの使い方です。
受験生のよくある疑問にも触れているので、基礎事項の理解を深めることもできます。

2-3. 大学入試 応用・発展問題レベル

物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版 物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版
理科
物理
物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版
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中川雅夫 為近和彦
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物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版』(旺文社)

実際の入試問題を収録した問題集です。解答・解説が見やすくまとまっており、各問題の解説では、使用する公式やミスしがちな気を付けるべき注意点、設問にまつわる物理の本質的な内容にも触れられています。
「熱力学」だけでなく他の分野も、この1冊でまんべんなく勉強できます。

その他に大学入試対策レベルの問題集として、次の2冊をおすすめします。

良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版 良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版
理科
物理
良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版
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浜島清利
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良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版』(河合出版)

名問の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ] -三訂版-			 名問の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ] -三訂版-
理科
物理
名問の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ] -三訂版-
4.7
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名問の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ] -三訂版-』(河合出版)

これらの参考書は以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>> 【単元総まとめ】「力学」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書7選

3. まとめ

高校物理における「熱力学」の特徴と各単元のポイントを解説しました。
「熱力学」では、典型的な問題が出されることが多いです。特に「気体の状態変化」が頻出なので、問われているのがどの状態変化に該当するか整理して、問題を解くとよいでしょう。
そこまで覚えることが多くない分、点数が伸びやすく得意にしやすい分野です。ポイントを押さえて、着実に得点アップを目指しましょう!

StudiCoサポーター I.T.
東京大学 理科一類 合格