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【単元総まとめ】「電磁気」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書6選

2023.11.01

高校物理のなかでもたくさんの公式が登場し、難しいと感じる受験生も多い「電磁気」分野。
「公式が覚えられない…」「電磁気が苦手でテストの点数が取れない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
「電磁気」分野の特徴や各単元のポイントを総まとめ。基礎レベルから大学入試対策レベルまで、おすすめ参考書もあわせて紹介します。

1. 電磁気の全体像~公式の覚え方・使い方~

「問題を解く時に公式をどう使えばいいのか分からない…」「公式が多過ぎて覚えられない…」――物理の学習においてこんな悩みがある場合は、問題演習の量を増やすか、解答を導く時の意識を変えてみると良いかもしれません。
公式を問題の中でどう使うかを意識しながら、まずは繰り返し問題を解いて頻出パターンの解法を身に付けることを目標にしましょう。解けなかった問題があったら、必要になる公式をピックアップしてまとめておいて、問題を見ただけで使う公式・解法がパッと思い浮かぶまで繰り返し復習するのが理想です。
また、「力学」等の他の分野を絡めた総合的な設問が出題されることもよくあるので、「電磁気」の知識だけでなく、これまで習った範囲の知識が使えることも要求されます。他の分野もこまめに復習して、総合的な設問の対策をしておきましょう。
例えば、コンデンサーの極板の間に導体や誘電体を入れる問題では、「電磁気」だけでなく「力学」の公式も使用します。電気容量や仕事などの物理量をそれぞれ求める際に、どんな公式を使うか把握しておけば、同じパターンの問題形式が出題された時にすんなり解けるはずです。

「電磁気」では(1)電場(2)電流(3)電流と磁場(4)電磁誘導と電磁波の4つの単元を勉強します。各単元の学習する際のポイントについて簡単に紹介するので、ぜひ勉強計画に役立ててください。

1-1. 電場

[1]静電気力
2つの電荷の電気量の符号が同じ時には「斥力」、異なる時には「引力」がはたらきます。電子のふるまいの違いによって導体では「静電誘導」、不導体では「誘電分極」が起こります。
[2]電場
ここで学ぶのは、電荷の周りに生じる電場がほかの電荷に力を及ぼす、ということです。電荷が単独にある時の電場ベクトルを重ね合わせることで、複数の電荷がつくる電場を求めることができる性質があります。
「電気力線」は実際に存在しているわけではないですが、非常に便利な考え方なので使えるようにしておくと良いです。
[3]電位
静電気力は保存力なので、重力と同じように「位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)」を考えることができます。電位差によって、静電気力のする仕事・外力のする仕事は勘違いしやすいので、もう一度仕事について復習しておきましょう。
電場と同じように電位も重ね合わせることができ、電場は電位の高い方から低い方へ向かうといった、電場と電位という概念の関係性についてしっかりおさえておきましょう。
[4]物質と電場
静電誘導や誘電分極によって導体・不導体で電場内での性質が異なります。「静電遮蔽」についての問題が出題されることもあるので要注意です。
[5]コンデンサー
コンデンサーについての公式はいくつもありますが、どれも重要な公式です。公式の導出過程を理解していると簡単に解ける問題もあるので、しっかりチェックしておきましょう。
コンデンサーの問題は頻出ですので、まずは極板の電気量や電位等についての連立方程式を立てて解いていく定石に慣れるまで繰り返しましょう。
極版の間に導体や誘電体を入れた場合の電気容量を求める問題や、極版を動かしたときの仕事を求める問題など、コンデンサーだけでも様々なパターンの頻出問題があります。基本的な性質を理解し、定石の解法を正しく使えることが何より大切です。

1-2. 電流

「オームの法則」「キルヒホッフの法則」などの基本となる法則は必ず押さえておきましょう。また、電流計や電圧計の正しい使い方・仕組みについて問われることがあるので、要チェックです。
「p型半導体」や「n型半導体」の接合の順序は、それぞれの半導体のキャリアは何かということをおさえておけば、迷うことはないでしょう。
「電磁気」の分野ではコンデンサーや半導体など、身近な精密機器に使われている電子部品について勉強できます。気になった人は、どんな部品が何の製品に使われているか、自分で調べて学習を深めてみましょう。

1-3. 電流と磁場

電気と磁気は非常に似た性質を持っていてお互いに影響し合っています。この単元で押さえておくべきことは、電流は周囲に磁場をつくる、そして電流は磁場から力を受けるということです。
電流がつくる磁場の向きは「右ねじの法則」によって導き出すことができ、電流が磁場から受ける力の向きは「フレミング左手の法則」によって導き出すことができます。ただしこれらの法則には、電流と磁場の垂直な成分に注目しなければならないなど、使う際には注意点があります。
「ローレンツ力」は後の「原子」の分野でも登場する重要な概念です。ローレンツ力の性質について、「ホール効果」等と合わせて理解しましょう。

1-4. 電磁誘導と電磁波

[1]電磁誘導の法則
「ファラデーの電磁誘導の法則」の通り、誘導起電力は磁束の変化を打ち消す向きに発生し、磁束の変化が大きいほど、また、磁束変化にかかる時間が短いほど大きくなります。「電流と磁場」の解説でも触れたとおり、これらの垂直な成分に注目して計算しましょう。
[2]交流の発生
交流電圧の位相の部分はさまざまな表し方があります。問題によって臨機応変に対応できるとよいでしょう。三角関数の性質を活用するので、数学とのかかわりを感じることができて面白いです。
[3]自己誘導と相互誘導
自己誘導によって電流がどう変化するのか、直流回路・交流回路の両方でおさえておきましょう。相互誘導の出題頻度は低いですが、覚えることは少ないので問題演習を通じて覚えておきましょう。
[4]交流回路
微分積分の知識があれば、電圧に関する式を微分方程式ととらえることで解を求めることができます。微分方程式が解けなくても、抵抗・コイル・コンデンサーにかかる電圧の最大値の合成の図を覚えておくことで暗記する量は減らせるでしょう。
「インピーダンス」の求め方がわかれば、インピーダンスを最小にするような共振周波数が求められます。
[5]電磁波
「原子」の分野、さらにはその先の分野につながるような内容です。共通テストでは電磁波の種類や性質等の細かい内容を問われる可能性があるので、高得点を狙いたい場合はしっかり押さえておきましょう。
ラジオの電波や医療等で用いられるX線など、実生活に使われている技術について触れられているのでとても面白い単元です。

2. 電磁気の勉強におすすめの参考書6選

2-1. 定期テスト対策レベル

名人の授業シリーズ 橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】電磁気編 名人の授業シリーズ 橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】電磁気編
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名人の授業シリーズ 橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】電磁気編
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橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】電磁気編』(ナガセ)

さまざまなタイプの問題にひとつずつ細かい解説がされていて、教科書だけでは理解が不十分だった、あるいは「電磁気」の問題をひと通り確認しておきたいといったケースにおすすめです。
問題の解説とあわせて物理現象の原理についてもかみ砕いた説明がされているので、基礎事項の理解の手助けになるでしょう。

 

宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版 宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版
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宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版
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鯉沼拓 為近和彦
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宇宙一わかりやすい高校物理 電磁気・熱・原子 改訂版』(学研プラス)

公式を分かりやすく説明するために図やイラストがふんだんに使われていて、「電磁気」分野を初めて勉強する際にも楽しく取り組めるようになっています。
別冊で問題集が付いていますが問題数自体は少ないため、物理現象や公式を理解するための参考書として使用しましょう。

2-2. 大学入試 基本問題レベル

漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版   漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版  
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漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版  
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漆原晃
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漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座』(旺文社)

入試問題の頻出パターンをまとめ、どんな解法を使えばよいかがすぐ分かるようにまとめられています。総合的な問題について解説されているので、演習を通して各単元の要素が絡んだ複雑な問題を解けるような力が身に付くでしょう。
公式についてはある程度定着していることが前提になっているので、「公式を覚えているけれど実際の問題を前にすると行き詰まってしまう…」という場合におすすめです。

 

物理のエッセンス熱・電磁気・原子 物理のエッセンス熱・電磁気・原子
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物理のエッセンス熱・電磁気・原子
4.6
浜島清利/著
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物理のエッセンス熱・電磁気・原子』(河合出版)

シンプルにまとまった図と丁寧な文章の両方で、例題が解説されているのが特徴です。始めにまとめられている解法の見通しを意識しながら解法を身に付けるのが、おすすめの使い方です。
受験生のよくある疑問にも触れているので、基礎事項の理解を深めることもできます。

2-3. 大学入試 応用・発展問題レベル

物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 6訂版 物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 6訂版
理科
物理
物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 6訂版
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中川雅夫 為近和彦
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物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 6訂版』(旺文社)

実際の入試問題を収録した問題集です。解答・解説が見やすくまとまっており、各問題の解説の始めには、使用する公式やミスしがちな気を付けるべき注意点、設問にまつわる物理的な本質の部分にまで触れられています。
「電磁気」だけでなく他の分野も、この1冊でまんべんなく勉強できます。

 

難問題の系統とその解き方 物理 電磁気・原子 新装第3版 難問題の系統とその解き方 物理 電磁気・原子 新装第3版
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難問題の系統とその解き方 物理 電磁気・原子 新装第3版
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服部嗣雄
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難問題の系統とその解き方 物理 電磁気・原子 新装第3版』(ニュートンプレス)

「電磁気」の問題について、微積分を用いて解説しているのが特徴です。三角関数の微積分ができれば理解できるので、「微積分を使って物理の問題を解いてみたい!」という場合にはおすすめの参考書です。
実際の大学入試で出題された問題が多く収録されており、問題集としても十分に活用できます。

3. まとめ

「電磁気」分野の特徴や各単元のポイント、おすすめの参考書を紹介しました。
「電磁気」分野では演習を繰り返すことが大切なので、まずは自分の実力に合った参考書を選び、徐々にステップアップを図りましょう。公式の形をただ覚えるだけでなく、問題を解く上でどう使うかをセットで覚えることを意識すれば、次第に現象への理解も深まるはず。
総合的な問題を解けるようになるためにも、まずは各分野の基礎事項をしっかり身に付けることが合格への近道です!

StudiCoサポーター I.T.
東京大学理科一類 合格