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「法学部」ってどんな学部?法学部に関する疑問に現役大学生が回答!

2023.12.01

進路を考えるにあたり、大学の志望学部選びは進んでいますか?
数ある学部の中でも人気の「法学部」では、どのようなことを学ぶのでしょう。「法律」を学ぶ学部であることはわかっても、「みんな弁護士を目指しているの?」「どんな授業を受けるの?」などの疑問は付き物です。
法学部志望生や学部選びで悩み中の受験生に向けて、法学部に在籍する現役大学生がくわしく解説します。

1. 法学部での学びとは

法学部ではその名の通り「法律学」に加え、「政治学」に関する授業も開講されている場合が一般的に多いといえるでしょう。
法律や社会制度については、高校でも社会科の学習範囲に含まれています。例えば、国際条約の策定過程を学んだり、選挙制度の変遷を学んだり。—―社会科の授業以外でも、憲法の改正などが時事問題として取り上げられるケースもあるかもしれません。
とはいえ、高校時代に法律を深く学ぶ機会は少なく、そもそもどのような法律があるのかもよくわからないという人もいるかもしれません。そのため、まずは「法律学」から説明しましょう。
法律学も、「国内法」と「国際法」に分かれます。
「国内法」は、もちろん日本の法律についてです。主に「日本国憲法」「民法」「刑法」「債権法」など、日本の国内規定の根底にある法律を、大学では1年次から2年次にかけて学び、その後高学年になってから、「担保物権法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」「会社法」「労働法」など、先に学んだ法律を基礎として、応用的な事例を取り扱うカリキュラムが組まれるケースが多いです。
「行政法」や「環境法」の授業では、国家や地方自治体がおこなっている公共事業に関連した訴訟などを学ぶことができ、国家の制度面についての研究に繋がることもあります。
一方の「国際法」では、日本だけでなく二国間や多国間での規則、場合によっては個人と国家の関係について学ぶことができます。「国際紛争処理法」や「国際人道法」などについて条約や国連の決議文から、「国家実行」(国家による行為)に関して国際司法裁判所の判例などから学びます。
また、政治学は国内や海外の政治について学びます。政治の動向のみならず、政治過程や政治行動、国家権力についてなど、社会制度の基礎を学ぶことができます。政治学は社会学や経済学の領域に関わることも多く、比較的分野横断的な学問領域とも言えるでしょう

2. 現役法学部生が解説!法学部に関する疑問

法学部に関する素朴な疑問を、入学前・在学中・卒業後のフェーズに分けてまとめました。
複数の現役法学部生が、それぞれ詳しく回答します。

2-1. 法学部入学前の気になる疑問

・何をきっかけに法学部を志望したの?
志望のきっかけについて、現役法学部生3人にインタビューしてみました。

筆者(法律学科4年):
日本の科学研究に興味を持ち研究者を志していたが、研究現場の予算の厳しさや待遇面の悪さの現状、日本人頭脳の海外への流出に問題意識を持ち、制度の面から日本の研究市場を支えたいと思い、法制度を学ぼうとした。

Kさん(国際関係法学科2年):
人権分野に高校の時から興味があり、「ブラッドダイヤモンド」という映画を見て子どもの人権を学びたいと思った。国際法にも興味を持ち、法の役割や法の機能を学びたいと思った。

Mさん(法律学科4年):
部活動で楽譜を扱った経験から著作権法に触れ、知財法について学びたいと思った。

――その他、「ドラマを見て検察官に憧れた」「どの大学にも法学部が存在していることが多いため、受験ハードルが低かった」などの理由も…。バラエティ豊かな志望理由から分かるように、法律や社会の制度は色々な分野にまたがっているので、法学部はさまざまな自分の興味分野とつなげて勉強しやすい学部と言えます。

・どんな人が法学部に向いているか、適性はある?
法学部での学びは、まず対象となる事件の概要を調べ、六法全書の条文に照らしながら、どこに問題点が見出せるか特定をします。過去の「判例」(※)も引き合いに出しながら、最終的に「違法」か「合法」か、自分なりに結論を出すところがゴールです。
自分の感情に基づいた判断ではなく、物事を客観的に俯瞰でき、論理的に思考しながら自分の考えを伝えることができる人が向いていると言えるかもしれません。

※判例とは……過去の裁判において裁判所が示した判断。特に最高裁判所が示した判断のことを指す場合もある。

・大学ごとの法学部の違いについて。GMARCH・早慶上智・国立私立の違いはある?
法学部は大学ごとに特色が出にくく、大きな差が生まれにくい学部かもしれません。基本的にどの大学でも同様の講義を受けられるといえます。――というのも、大学1年次から2年次にかけて履修する、いわゆる法学の基礎科目である「憲法・民法・刑法・債権法」はメジャーな教科書が存在し、有名な判例も決まっているからです。
しかし、上智大学のように「地球環境法学科」「国際関係法学科」を設置しているなど、強みのある分野を持っている大学もあるので、法学部で学びたい領域が定まっている人は、大学の公式サイトなどをよくチェックしてみましょう。
自分が学びたい分野が決まっている場合は、気になる大学のシラバスを確認し、自分が学びたい分野に関連する授業が多く開講されているか、その分野に精通した教授が在籍しているかを確認してみると良いかもしれません。

2-2. 法学部在学中の気になる疑問

・法学部って『六法全書』をずっと読んでるの?
『六法全書』とは、「憲法」ならびに「民法」「商法」「刑法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」をはじめ、主な法令が収録されているものです。判例を読んでいる際に、どこに問題があるかを指摘する際に条文を参照します。
『六法全書』を読み込むというよりも、講義を聞きながら法体系を学び、判例を確認しながら根拠となる条文を辞書のように照らし合わせるといったイメージです。分厚い『六法全書』の内容を全部覚えていくわけではなく、「この判例の際は、この条文を根拠に違法か合法かを判断する」というように、条文が掲載されている場所を覚えることが多いです。

・高校生の時の勉強とどれくらい違うの?
「日本国憲法」や「子どもの権利条約」は高校の公民の授業でも出てきますよね。他の学部でも言えることですが、大学ではより詳細に学びを深めます。
例えば、憲法9条において「戦争の放棄」が定められている事実を高校で扱いますが、大学の憲法の授業では、「違憲」であると判決された事例をみて、同様の事案が起きた際にどう判断すべきかをトレーニングするイメージです。
また、法学部の授業の中でも、「概論」と「各論」では内容の濃さが全く異なり、簡単にいえば、高校生の時よりもマニアックでニッチな分野を学ぶことができるようになります
大学での学び全般的に言えることではありますが、ある分野の「理解」の段階で相当な労力と時間が必要なため、自分の興味とかけ離れていると、途中で力尽きてしまうリスクもあります。しっかりと学びたい分野を検討して臨みましょう。

・法学部の試験ってどんな感じ?法律を丸暗記?
条文を全て暗記する必要はなく、「○○条に何が書かれていた」ということや、「判例や学説でその条文をどう解釈するのか」という考え方を勉強します。
試験の際に多く出題されるのが事例問題です。法学部で問われるのは用語の暗記ではなく、あるシチュエーションが提示されて、それに対してどのように判断するかを論述する力です。過去の判例においてどのように判断されたかを理解しているか、それを現在の問題にもうまく適用できているか、何を根拠にその判断を正当だと結論付けたかを記述し、それらの論理性も評価されます。
法学部では基本的に、調べ学習や調査の結果をまとめたレポートではなく、試験において理解度が判断されることが多いと言えます。

2-3. 法学部卒業後の気になる疑問

・弁護士や検察官になる人が多いの?
大学にもよりますが、法科大学院に進んだり、司法試験予備試験(※)を受験したりして弁護士や検察官になる人は、さほど多くありません。法学部卒のほとんどの人が、一般的な民間企業へ就職するケースが多いようです
弁護士・検察官・裁判官を目指す人は、大学のホームページをよく確認し、法曹のキャリアへ進んだ人の割合が多い大学を選んだ方がよいでしょう。

※司法試験予備試験とは……「法科大学院を修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎素養を有するかどうかを判定する」(司法試験法5条)ための予備試験。現在の司法試験の受験資格は、予備試験に合格する予備試験ルート、法科大学院を卒業する法科大学院ルートの2種類がある。

・法学部での勉学は卒業後どのように役立つの?
法曹に進み、法律を仕事にする人はもちろん、一般的な民間企業での仕事でも法律が役立つ場面はたくさんあると言えます。民間企業に就職する場合も、法学部から進む業種は幅広く、メーカーから金融機関、メディアまでさまざまです。
法学部を卒業して希望をすれば、企業の法務部など法律知識を生かした仕事ができる部署に配属されることもあります。特に、会社法や労働法関連の知識は企業法務において必要不可欠であり、法学部での学びを存分に生かすことができるでしょう。一方で、大企業の法務部は、法科大学院の卒業以上の要件を提示している場合もあるので、注意が必要です。
また、公務員試験を受験して公務員になる人もいます。どの学部を卒業していても公務員試験を受験することはできますが、受験科目において法律系や経済系の問題が多く出題されるため、学部で法律を一度学んでいる法学部生は有利かもしれません。
法曹や公務員、民間企業など、法学部での学びはさまざまな場面で役立てることができるでしょう。

3. まとめ

法学部に関する疑問のあれこれについて、現役大学生の視点から答えました。
法学部を設置している大学は多く、法学部での学びの門戸は広く開かれていると言えるでしょう。
この記事を読んで法学部が気になった受験生は、どうぞ法学の世界へ!法治国家である日本で、その一番大事なエッセンスについて学べますよ。
法学部で共に学べることを楽しみにしています。

StudiCoサポーター M.O. 上智大学法学部 有志
上智大学 法学部 合格