• 国語
  • 古文

古文単語の覚え方 ~単語集を使い倒す学習段階別おすすめ勉強法~

2021.06.11

大学受験に臨む多くの人にとって古文(古典)の対策は避けて通れないもの。その古文の学習で必須となるのが、古文単語の暗記です。後回しになりがちな古文単語の習得を、1冊の古文単語帳・単語集を使って効率よく進める方法を学習段階別にレクチャーします。
自分の目標や進度に合った古文単語の覚え方を見つけて、ぜひ実践してみてください。

1.  古文単語を覚える意義と大学受験に必要な単語数

1-1.  古文単語を覚える必要性

英語などの外国語と異なり、日本語で書かれている古文の文章は、現代に生きている私たちでも何となく読めたつもりになってしまうことがあります。しかし、同じ日本語といえども数百年の時を隔てているため、文法も単語の意味も現代語とは似て非なるもの。もはや外国語として認識した方が、正しい理解に結びつくケースが多いかもしれません。
英語の長文読解の際に単語に対するある程度の知識がないと英文が読めないのと同様に、古文の文章読解をする時に重要になるのが古文単語です。
例えば「心憎し」という古文単語がありますが、この意味を知らない人からすれば、「憎い」という部分の現代語の意味「憎たらしい、不愉快だ」から、マイナスの意味であると推測してしまうかもしれません。しかし実際には、古文単語の「心憎し」は「奥ゆかしい」という意味なのです。古文の文章読解をする時に、このような読み違いがないように、古文単語(古語)を覚える必要があります。

1-2. 古文単語集は何冊必要?

暗記しなければならない古文単語の数は、英語で覚えなければならない単語数に比べれば、圧倒的に少ないのが事実です。大体1000~3000語覚えなければならないと言われる英語に比べて、覚えなければならない古文単語は300語から600語程度と言われています。
古文単語を覚える時、まず必要なのが古文単語集です。書店で販売しているものや、学校で配られるものなどさまざまな本がありますが、基本的に古文単語集・単語帳は1冊で十分です。何冊も色々な単語集に手を出すよりも、これと決めた1冊を何周もする気持ちで使いましょう。この記事でもおすすめの単語集を載せているので、ぜひ参考にしてみてください。

2.古文単語の覚え方〈初級レベル〉 

この章では、次に挙げる項目に当てはまるような勉強の初期段階での学習方法について、古文単語集の使い方と合わせてレクチャーします。
・古文単語を覚えなければいけないのはわかっているが、覚え方がわからない。
・古文単語の何から覚えればよいのかわからない。
・1つの古文単語にいろいろな意味があって覚えきれない。
・古文を学び始めたが苦手意識があり、古文の文章を読んでいても意味が捉えられない。

〈初級レベル〉ではまず、何よりも古文単語に触れる機会を作ることが大切です。

まずは古文単語集の「最重要○○語」「頻出単語○○語」という項目や、「頻出単語」「Aランク」といった、重要であることが示されている単語から覚えましょう。例えば、『古文単語330』(いいずな書店)では「読解必修語」として50語がまとまっており、『古文単語 ゴロゴ』では「ランクA」として見出し語の左上に重要度がランク付けされています。
これらの単語について、以下のことを意識しながら覚えましょう。

(1)単語のメインの意味を中心に覚える
(2)計画的に覚える
(3)復習する

(1)単語のメインの意味を中心に覚える

古文単語には一つの単語に対して複数の意味を持っているものが多いです。例えば「おどろく」という単語には「1)目を覚ます」「 はっと気が付く 驚く」という2つの意味がありますが、古文単語としてより重要なのは1つ目の「目を覚ます」という意味です。このように現代語とは異なる意味を、まずは優先して覚えましょう。
1つの古文単語にある複数の意味が、 現代語と異なる意味である場合は、始めから細かい情報まで詰め込んで覚えようとせずに、単語集に載っている1つ目の意味を中心に覚えていきましょう。

(2)計画的に覚える

大学受験で覚えるべき古文の単語数は全体でもあまり多くないので、スキマ時間を活用することをおすすめします。例えば、「朝の通学の電車の中で10分だけ」「寝る前の15分だけ」というように短時間でよいので、何度も単語に触れるようにしましょう。
その際、「今週は単語集の○○ページまでの、この15語を覚える」というように具体的な目標を設定し、週末に簡単なテスト(ルーズリーフなどの紙に覚えたい古文単語を並べて書き、その横に調べずに意味を書いていく)を 、自分がどのくらい覚えているか確認しましょう。古文単語集に付いているチェック問題や学校でおこなわれる小テストを利用するのも1つのやり方です。

(3)復習する

古文単語は英単語に比べて覚える語数が少ないので、触れる機会もあまり多くないかと思います。しかし、どんな暗記科目でも継続してその情報に触れることが一番大切です。
一度覚えたと思っても、しばらくの間全く思い出さずにいると、必要のない情報として脳は忘れてしまいます。ですから、忘れないように何度も繰り返すことが必要です。
新しい単語を覚えつつ、過去に覚えた単語も時々振り返って単語集を何周もしてみましょう。特に〈初級レベル〉で覚えたい単語は、古文の文章の中で繰り返し登場することが多いので、見かける度に覚えているかチェックしましょう。

3. 古文単語の覚え方〈中級レベル〉 

ある程度主要な古文単語を覚えられたら、次に古文単語の語彙を増やしましょう。
この章では、次に挙げるような症状に陥りがちな、勉強の中期段階での学習方法についてレクチャーします。

・古文単語集を2,3周して基礎的な単語は覚えたが、語彙が増えない。
・文脈の中で古文単語の意味を捉えられない。
・古文単語の複数の意味を覚えられない。

〈中級レベル〉では古文単語の語彙を広げるために、その語のイメージをつかむことが必要になります。最重要語や基本語を覚えることができたら、学習範囲に新しい語を増やしつつ、古文単語の意味についてより深い理解を心がけましょう。そうすることで、文脈の中でも正しく意味を捉えられるようになります。
そのために、以下のことを意識しましょう。

(1)漢字がわかるものは漢字で覚える
(2)その古文単語の語源を知る
(3)例文で覚える

(1)漢字がわかるものは漢字で覚える

古文単語の中には、漢字で覚えるとその語のイメージをつかみやすいものがあります。例えば、「いとおしい、かわいい」という意味の「かなし」という語は、漢字で書くと「愛し」となり、「いとおしい、かわいい」という単語の意味に「かなし」という音が結びつきやすくなると思います。
新しい単語が出てきたときには、単語集や古語辞典で漢字での表記が可能かどうか確認し、当てはまる漢字があれば漢字表記で覚えるようにしましょう

(2)その古文単語の語源を知る

1つの単語で多くの意味がある古文単語は、その意味をひとつひとつ個別に覚えようとすると膨大な数になってしまい効率的とは言えません。そこで、複数の意味の根源にある意味を知ることで、それぞれの意味を紐づけて覚えていくというやり方があります。
例えば「かたはらいたし」という語は、元々「傍ら(にいて)痛し」という状態を表す語で、そこからその場にいられないほど「見苦しい」「気の毒だ」「恥ずかしい」という意味になったと言われています。したがって、この語の意味の中心にあるのは「傍にいてつらい、見ていられない」というイメージです。それを覚えていれば、「見苦しい」「気の毒だ」「恥ずかしい」という意味を関連付けやすくなり、それぞれの意味を単独で暗記するよりは格段に覚えやすくなると思います。
語源が単語集に書かれていなければ、自分で調べた情報を書き込んで解説をつけておくと、記憶の定着につながります。

(3)例文で覚える

古文単語は同じ単語でも文脈によって訳の方法が変わるものがあり、文章を読む段階では、その単語のどの意味が最適かを見極めなければならないことが多々あります。そこで「訳し分け」をする際に覚えていると役立つのが、単語集に掲載されている例文も一緒に覚えてしまうことです。
例えば、「よし」という名詞には「縁」「方法」「風情」「事情」「素振り」という5つの意味があり、どの意味を使うかは文脈に左右されます。そこで、「縁」と「方法」という意味について、それぞれ「春日の里に、しるよしして、狩りに往にけり」と「人に知られで来るよしもがな」という例文をおぼろげにでも覚えていると、該当する「よし」の意味の具体的な使用例が思い浮かびます。「これは“来るよし”の“よし“だ」というように思い出せるので、問題文の訳を導く時に大変便利です。
もちろん全ての単語について例文を覚えるのは大変なので、特に覚えられない単語を中心に試してみてください。

〈中級レベル〉の学習では、古文単語の語彙を増やすために、単語集や古語辞典を最大限に活用して、古文単語に対する理解を深め、そのイメージを広げていきましょう。

4. 古文単語の覚え方〈上級レベル〉

大学受験で古文の対策が必要な場合、これまでに紹介した学習方法では不十分なケースがあります。次に挙げる項目に心当たりがあるようなら、難関大学入試の問題読解にも対応できるよう、古文単語の覚え方を極めておきましょう。
・志望する大学の過去問を解いていて、単語力不足が気になる。
・古文単語集1冊の知識を完璧な状態にしたい。

〈上級レベル〉では、以下のことを意識して古文単語を覚えてみましょう。

(1)覚えきれていない単語にマークを付ける
(2)新しく出てきた単語は、単語集の余白にメモしておく
(3)単語 を関連づける

(1)覚えきれていない単語にマークを付ける

これまで使ってきた古文単語集を取りこぼしのない完璧な状態にするため、覚えきれていなかった単語、問題で出てきてわからなかった単語に付箋を貼ったりマーカーを引いたりして、対象の単語を整理しましょう。
例えば、過去問を解いていてわからない単語があった時に、丸付けの後で単語集にその単語が載っていないかどうか確認します。この時に単語単位で印をつけるのではなく、その単語に対応する該当の意味に印をつけておくと、「この単語のこの意味を覚えていなかった」ということがわかります。
おすすめは、間違えたり忘れていたりしたら、毎回印をつけておくことです。そうすれば、過去に何度同じミスをしたかが単語集に刻まれていくので、覚えるべき単語が段々と絞られていきます。

(2)新しく出てきた単語は、単語帳の余白にメモしておく

実際に問題読解を進めていて、今まで見たことのない古文単語がでてきた時、自分が使ってきた単語集に意味と合わせて追加する方法です。
例えば「こしらふ」という古文単語が出てきた時に、単語集を確認してみても意味が載っていなかった場合、余白のページなどに「こしらふ(慰ふ・誘ふ)→なだめる、とりつくろう」のように書き込んでおいて、「この単語は一度目にして意味も調べてある」という記録を残しておきます。そうすることで単語集に情報が追加され、自分だけの単語集ができあがっていきます。

(3)単語どうしを関連づける

情報量が増えるにつれ、ひとつひとつ別の古典単語として覚えるのが大変になってきた時は、今まで自分が覚えた単語との関連を調べてみましょう。
例えば、古文の文章を読んでいて「託言(かごと)」という名詞が出てきて、意味がわからなかったとします。単語集を調べても載っていないとなると辞書で調べることになりますが、辞書では「かこちごと」という表記が出てくると思います。
ここで思い出してほしいのが「不平を言う」という意味の「かこつ(託つ)」という単語です。「かこつ」は、たいていの古文単語集には収録されている単語なので、実は一度は目にしている単語であることに気が付くと思います。こうすることで、知っている単語「託つ」と新しく出てきた「託言」が紐づけられたのではないでしょうか。このように、新しく出てきた古文単語も既知の単語と紐づけることで、効率的に知識を広げることができます。

〈上級レベル〉の学習では、実際に文章問題を解きながら、使い慣れた単語集を使って情報量を充足させる方法が効果的です。使い慣れた単語集にどんどん情報を書き込んで、自分だけの単語集を作りましょう。

5. おすすめの古文単語集3選

使いやすく受験生からの人気も高い、おすすめの古文単語集を3冊紹介します。自分に合った1冊を探してみてください。

古文単語330 三訂版 古文単語330 三訂版
国語
古文
古文単語330 三訂版
4.6
  • ほしい (4)
  • おすすめ (4)

古文単語330 三訂版』(いいずな書店)
学校で配布されることも多い人気の古文単語集で、重要古語330語を「Key」という原義解説と「Point」という学習補助で、覚えていくつくりになっています。
その古文単語の由来と語の持つイメージについて詳しく解説されており、古文単語について本質的な理解を深めることができるでしょう。

新・ゴロゴ古文単語 新・ゴロゴ古文単語
国語
古文
新・ゴロゴ古文単語
5
ゴロゴネット編集部 辻孝宗
  • ほしい (6)
  • おすすめ (0)

新・ゴロゴ古文単語』(スタディーカンパニー)
古文単語に対して、語呂(ゴロ)というアプローチを試みる単語集です。面白いゴロにわかりやすいイラストがついており、視覚的にも記憶に残りやすい紙面になっています。
またレベルに合わせてランク分けがされ、各ランクの中で単語が五十音順に配置されているので、辞書的な使用も可能です。

マドンナ古文単語230 マドンナ古文単語230
国語
古文
マドンナ古文単語230
4.3
荻野文子/著
  • ほしい (2)
  • おすすめ (10)

マドンナ古文単語230パワーアップ版』(学研プラス)
入試重要古文単語の230項目(382語)について、それぞれ語源などの詳しい解説文がついています。特に入試問題で出てきた時に訳出する際の注意点や、関連する知識も同時に吸収することができるので、受験対策に有益な情報をたくさん仕入れることができる1冊といえるでしょう。

6. まとめ

古文の問題を解く上で、古文単語の暗記は避けて通れません。知っている古文単語が増えれば「古文の意味がわかる!」という感覚を味わう機会が、段々増えていくと思います。
古文単語の覚え方を、〈初級レベル〉から〈上級レベル〉までに分けて以下にまとめます。

〈初級〉古文単語に触れる機会を増やす覚え方

(1)単語のメインの意味を中心に覚える
(2)計画的に覚える
(3)復習する 

〈中級〉古文単語の語彙を増やし、単語のイメージをつかむ覚え方

(1)漢字がわかるものは漢字で覚える
(2)古文単語の語源を知る
(3)例文で覚える

〈上級〉古文単語集1冊を完璧にして古文単語の知識を仕上げる覚え方

(1)覚えきれていない単語にマークを付ける
(2)新しく出てきた単語は、単語集の余白にメモしておく
(3)単語どうしを関連づける

自分自身にあった方法で効率的に古文単語を覚え、受験科目で古文を得点源にして他のライバルたちと差をつけましょう!

 

StudiCoサポーター Y.T.
お茶の水女子大学 文教育学部 合格、早稲田大学 文学部 合格、明治大学 文学部 合格、津田塾大学 学芸学部 合格