基礎力が問われる共通テスト。一見ハードルが低そうですが、高得点をとるのは容易ではなく十分な対策が必要です。
2025年度から始まる新課程の共通テストの中でも、「数学II, 数学B, 数学C」科目は学習指導要領の変更による影響を受け、出題内容や問題数に変化があります。
「これから共通テストの対策を始めるけど不安だらけ…」「安定して目標点数を取る自信がない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
共通テスト「数学II, 数学B, 数学C」を対策する上で意識すべきことや、過去問以外で問題演習に適したおすすめ参考書を、目標点数別に紹介します。
※この記事は2023年10月に書かれた内容を一部最新の情報にリライトして投稿したものです。紹介するレポートには旧版のものも含まれています。
1. 【新課程】共通テスト「数学II,数学B,数学C」科目の特徴
2025年度の共通テストから、試験問題が新課程に対応した内容に変更されます。「数学II, 数学B, 数学C」科目について、2024年度までの旧課程から新課程への移行で注意するべき内容は、以下の3点です。
(1)「数学C」が再登場
新課程では2012年度以来扱われていなかった「数学C」が復活し、各科目で学ぶ単元も変更されます。
「数学II」で学ぶ単元は大きな変更はありませんが、「数学B」では旧課程で学ぶ「数列」に加えて、「統計的な推測」を学習します。「統計的な推測」では旧課程で学ぶ「数学B」の「確率分布と統計的な推測」の内容に加えて、新たに“仮説検定”を扱います。
「数学C」では旧課程「数学B」の「ベクトル」と「数学III」の「平面上の曲線と複素数平面」を扱います。「平面上の曲線と複素数平面」について、試作問題では「複素数」の回転移動がメインで問われ、「楕円」「放物線」「双曲線」の性質についても出題がありました。「複素数平面」では、「極座標」や「ド・モアブルの定理」といった基本知識を図形的な意味で捉えることが高得点のポイントになります。
(2)選択問題の出題項目が変更
共通テストの「数学②」教科では、新課程から出題科目が「数学II, 数学B, 数学C」となります(「数学II」のみの選択は廃止)。出題される項目は、「数学II」分野の必答問題3項目に加え、「数学B」の「数列」「統計的な推測」と「数学C」の「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の計4項目から3項目を選択することになります。
したがって旧課程との違いは、文系選択者は「統計的な推測」「平面上の曲線と複素数平面」、理系選択者は「統計的な推測」を新たに学習しなければならない場合があることです。共通テスト対策ではこれらを念頭に置いた上で、志望する大学の出題項目も参考に力を入れるべき単元を考慮しましょう。
(3)試験時間が70分に変更
新課程での試験時間は70分となり、旧課程の60分から10分延長されます。しかし、試作問題から解答する設問数の増加(4問→6問)を考慮した延長であると想定されるため、十分に対策をしていないと解答時間に余裕がなくなることが考えられます。
この3点に加えて、日常の実生活に関連した内容を基にした問題が増えることが予想されます。試作問題を見ると、問題の文章量が増えたり条件設定が複雑になったりしていることから、設問文から解答に必要な箇所を適切に把握する読解力や理解力が問われます。
なお、過去3年間における共通テスト「数学II・数学B」の平均点の推移は、59.93点(2021年度)→43.06点(2022年度)→61.48点(2023年度)です。年度によって難易度にばらつきがあり、その差も激しいことから、受験当日は自分の感覚での出来具合に一喜一憂せず、次の試験科目に臨むことも必要になるでしょう。
2. 共通テスト「数学II・数学B」科目の全体像 ~各大問のポイント~
本章では新課程の共通テスト「数学II・数学B」の各大問を解く上で押さえるべきポイントについて解説します。2024年度までの旧課程の過去問では問題形式が異なるので注意しましょう。
2-1. 第1問 三角関数/図形と方程式
「三角関数」では、基本公式を完璧に理解し使いこなせるかどうかが重要です。2023年度は「加法定理」「和積の公式」、2021年度は「三角関数の合成」がメインに問われました。これらの公式・定理はどれも頻出内容なので、適切に使いこなせるようになるまで問題演習を繰り返しましょう。
試作問題では「図形と方程式」は出題されませんでしたが、「三角関数」との複合問題として出題される可能性もあるでしょう。「直線の方程式」や「円の方程式」が頻出です。2022年度の問題では、円の接線の方程式について複数の解法を検討するといった出題がありました。今後の共通テストでも似たような出題形式が考えられるため、普段の演習では自分の正誤だけで満足するのではなく、別解といった複数の解法にも注目しましょう。
2-2. 第2問 指数・対数関数
「指数・対数関数」も「三角関数」と同様に基本公式をマスターしているかが重要です。
どちらの単元も典型問題を出題されることが多いため、過去問だけでなく普段使用している問題集などで演習量を積み重ねていきましょう。その際は、「真数条件」「底の条件」を考慮し忘れるミスが多いため注意しましょう。
2-3. 第3問 微分・積分の考え
「微分」では3次関数の極値・最大値・最小値が頻出となっており、「積分」では面積を求める問題が多い傾向にあります。奇をてらった問題は少ないですが、計算量が多くなり時間配分に失敗しやすいことが考えられるため、典型問題を解くスピードや計算をいかに工夫するかがポイントとなります。
2023年度はソメイヨシノの開花時期について、定積分を用いて推定するといった今までにない問題形式で出題されました。今後もこのような形式での出題も予想されますが、問題文をしっかり読み取れれば難度としてはそこまで高くないため、過去問演習などを通じて問題形式に慣れておきましょう。
2-4. 第4問 数列(選択問題)
条件設定が複雑になっている場合が多く、設問文を適切に理解する読解力が必要です。難度の高い終盤の小問の解法として、それまでに解答してきた問題での考え方がヒントになっている場合が多いため、設問文の誘導や条件設定に見落としがないか注意しましょう。
2023・2022年度では「漸化式」、2021年度では「等差数列」「等比数列」がメインに扱われています。特に「漸化式」では問題文が長くなる傾向にあるため、解答に必要な条件を読み取って自力で漸化式を組み立てる力をつけましょう。
2-5. 第5問 確率分布と統計的な推測(選択問題)
実生活に関連した題材を基に分析する問題が多く、解答に必要な箇所を設問文から適切に読み取る力が必要です。現状難度の高い問題はそこまで多くないため、共通テスト頻出の「確率分布」や「正規分布」といった基本事項について、用語から丁寧に理解すれば問題なく得点できるでしょう。
新課程からは“仮説検定”も出題範囲に含まれるため、用語の定義からしっかりと理解しておきましょう。
2-6. 第6問 ベクトル(選択問題)
典型問題が多く、基礎事項を押さえればしっかりと得点することが可能です。そのため、第4問の「数列」に比べて年度による問題の難易度の幅は小さい傾向があります。
例年出題される「平面ベクトル」に加え、2023・2021年度では「空間ベクトル」も出題されています。「空間ベクトル」では3次元(空間)を2次元(平面)に落とし込んで解いていくため、いかに「平面ベクトル」の内容を理解しているかが重要です。「ベクトルの内積」や「位置ベクトル」といった頻出事項をしっかり押さえて、演習に取り組みましょう。
2-7. 第7問 平面上の曲線と複素数平面(選択問題)
「平面上の曲線と複素数平面」は2024年から新たに出題されるようになる単元です。試作問題では、計算量が少ない分基礎的な理解を問う問題が多い印象でした。どんな問題が出題されるか予想が難しく、安定して得点するためには基本的な公式をしっかり身に付けて柔軟に対応できるようにしておくべきでしょう。
3. 【新課程】目標点数別・共通テスト「数学II,数学B,数学C」対策におすすめの参考書6選
共通テスト「数学II, 数学B, 数学C」の出題範囲の理解や問題の解法習得に役立つ参考書・問題集を、目標点数別に厳選して6冊紹介します。対策を進める上でのポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
※この章で紹介する参考書は2024年度までの旧課程の「数学II・数学B」を取り扱っている書籍を含みます。購入の際は改訂版書籍が刊行されていないか、事前にチェックをお願いします。
3-1. 〔60点〕受験者平均レベル
まずは、数学II・B・Cの公式や基本問題の解法を抜けなく習得しましょう。高校の教科書や問題集を使用して基礎固めをするのもおすすめです。共通テスト本番では、基本レベルの問題をいかに落とさないかが重要となります。全ての問題を時間内に解答することよりも、解ける問題を確実に正答することを優先しましょう。
次に、苦手分野でも安定し50%以上得点できることがポイントになります。得意分野で満点を目指すよりも、苦手分野の基本問題を正答できるように対策する方が、全体の得点を底上げしやすいです。授業時や過去問演習などを通じて、苦手な分野については出題パターンまで細かく分析しましょう。
共通テスト対策の基礎固めにおすすめの参考書は、以下の3冊です。
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『改訂第2版 大学入学共通テスト 数学II・B・Cの点数が面白いほどとれる本 0からはじめて100までねらえる』(KADOKAWA)
「パターン編」と「チャレンジ編」の2部構成となっています。
「パターン編」では共通テストで頻出の出題パターンが見開き1ページでまとまっています。共通テスト頻出の公式に関する証明問題や使い方のポイントなどについても扱っています。
「チャレンジ編」では、共通テスト本番レベルの問題に取り組むことができます。難易度や解答目安時間が記されているため、共通テスト本番で必要な数学力と自分の現状との差を把握することができます。
「これから共通テスト対策を始める」「基本的な解法から学習したい」といった場合におすすめの1冊です。
『共通テスト 数学II・B・C 集中講義 改訂版』(旺文社)
9つの「CHAPTER」があり、単元ごとにPOINTとして重要公式や基本的な解法、用語の説明などがコンパクトにまとまっています。練習問題がEXERCISEとして用意され、POINTの理解度を確認することができます。
ある程度解法を学べたら、過去の共通テストや試作問題から2~3題抜粋された巻末の「チャレンジテスト」で、自分の実力をチェック。解説のアドバイスを読むことで、正答に近づく思考のヒントも得ることができます。問題数はそれほど多くないため、他の参考書や過去問を併用して演習量を積むと良いでしょう。
「これから共通テスト対策を始める」「基本事項がコンパクトにまとまった参考書を使用したい」といった場合におすすめの1冊です。
『共通テスト必出 数学公式200 五訂版』(旺文社)
新課程の共通テストで頻出の数学I・A・II・B・Cの公式200項目がまとめられています。
このうち「数学II」は65項目、「数学B」は28項目、「数学C」は29項目。1項目につき1ページでまとめられており、公式の証明や間違いやすい点、例題などが紹介されています。
公式の証明についての説明がとてもわかりやすいので、理論からしっかり理解でき丸暗記に頼らずに済むようになるでしょう。新書版のサイズで、持ち運びにも便利です。
「スキマ時間や試験前に公式を確認したい」「公式を丸暗記しているだけで理解できておらず、適切に使いこなせない」といった場合におすすめの1冊です。
3-2. 〔70点〕上位国公立大レベル
ここからは、得意分野を伸ばすことを意識して学習を進めましょう。共通テストで70点を安定して得点するには、基本問題を確実に得点することに加えて、標準(~応用)問題にも対応できることが求められます。
まずは、自分が得意な分野1つで難度の高い問題を正答できるように学習を進めましょう。共通テストだけでなく、センター試験の過去問も活用して演習量を積んでいけるとなお良いです。
共通テスト対策の標準問題演習におすすめの参考書は、次の2冊です。
『大学入学共通テスト 数学II・B実戦対策問題集』(旺文社)
各単元、基本問題と実戦問題の2段階の難易度に分けて構成されています。解答目標時間が設定されているため、共通テスト本番を想定した演習に取り組むことができるでしょう。
別冊の解答では、全ての問題でSTEP式に解答手順が記されているため、自分の解答手順と照らし合わせて、間違えた原因を把握することができます。実戦問題の解説では、“この問題のねらい”として理解すべき基本事項について触れられており、間違えた箇所に対応する“POINT”を見直しながら効率的に復習できます。
実戦問題は各単元3~4題のため、他の問題集や過去問を併用してより実践的な演習を積みましょう。
「共通テスト対策に割ける時間が少ない」「過去問演習への橋渡し的なトレーニングをしたい」といった場合におすすめの1冊です。
『きめる!共通テスト 数学I・A&II・B』(Gakken)
単元ごとにUNITとして問題がまとまっています。冒頭では「知識の整理」として、基本公式や解法のポイントが色分けされてコンパクトに整理。
UNITごとに演習問題が6~8問用意されており、制限時間も設定されているので、本番を想定した演習をおこなうことができます。演習問題が「分析形式」「誘導形式」「会話文形式」「ICT形式」「実用形式」の5つのタイプに分類されているため、解答の道筋の立て方や他の形式との違いを意識することができるでしょう。解説では“解法の切り口“として解答の手順や問題を解く上で意識すべきポイントが記されており、間違えた問題の原因分析に役立てることができます。
別冊として「要点集」が用意されており、公式の丸暗記だけでは対応できない頻出の解法パターンを確認することができます。模試や共通テスト本番の直前に確認すると良いでしょう。
「過去問に加えてさらに演習量を積みたい」「共通テスト特有の出題パターンを分析したい」「共通テスト数学対策を1冊で完結させたい」といった場合におすすめです。
3-3. 〔80点以上〕難関国立大・医学部レベル
共通テストで安定して80点以上を取るには、どの単元でも完答できる力が必要です。問題演習の中で、自分の苦手な出題パターンや抜けている知識を整理しながら学習を進めましょう。
安定して高得点を取るには、選択問題について大問4つ全ての内容を確認した上で、難易度が低い3問を解答するのが理想的です。したがって、どの選択問題でも対応できるよう全ての項目をマスターできているとなお良いでしょう。
さらに、時間配分や検算といった実践的なテクニックを養う必要があります。自分に合った問題の解き方を模索しながら、過去問演習や模試に臨みましょう。
共通テスト対策の応用問題演習におすすめの参考書は、次の書籍です。
『短期攻略大学入学共通テスト数学2・B・C 実戦編』(駿台文庫)
共通テスト本番以上の難易度の問題が、単元ごとに8題(「微分・積分の考え」は10題)あり、計58題の演習を積むことができます。各問題で目標解答時間が表示されているため、時間配分を意識して問題演習に取り組むことが可能です。さらに、全ての問題で3段階の難易度が設定されているため、間違えた問題の難易度から各単元での理解度を確認できます。
「短期間で演習量を積みたい」「単元別に得点力を伸ばしたい」といった場合におすすめの1冊です。
わからない問題や知識の抜けが多いと感じる場合は、本シリーズの基礎編に戻って学習を進めるのが良いでしょう。
4. まとめ
共通テスト「数学II, 数学B, 数学C」では、基本公式や典型問題の解法といった基礎内容の定着度がとても重要になります。日常の実生活に関連した形式で出題されることもあるため、過去問演習などを通じて問題形式に慣れておきましょう。
また、大学によっては個別試験で「統計的な推測」「平面上の曲線と複素数平面」といった共通テストで使用した単元が不要になる場合があります。特に文系受験生は、志望する大学の出題傾向をしっかり把握しておきましょう。
新課程の共通テストを受験するにあたって、不安を感じることもあると思います。しかし、それはどの受験生も同じ。問題形式や傾向を理解して万全に対策しておくことで、自信を持って試験本番に臨めるようになるはずです。今回紹介した参考書や過去問を活用して、共通テスト「数学II, 数学B, 数学C」の攻略を目指しましょう!
*各単元の特徴や学習する上でのポイントについては、こちらの記事も参考にしてください!
>> 【苦手克服は基礎固めから!】数学2B(数IIB)の効果的な勉強法とおすすめ参考書4選
*共通テスト「数学I, 数学A」科目の対策方法については、こちらの記事を参考にしてください!
>> 【新課程】共通テスト「数学I, 数学A」目標点数別の勉強法とおすすめ参考書4選