共通テストの中でも「現代文」は解法のメソッドを掴みにくく、他の教科と比べて対策が後回しになりがちです。「共通テストでのみ現代文を使うため対策に本腰を入れられない」「個別入試でも現代文を使うけれど対策法がわからない」といった悩みも、よく聞かれるところです。
この記事では、「現代文」で課されることの多い出題の特徴をはじめ、共通テストの〈評論〉〈小説〉と大問別の対策法を紹介。また、共通テストの現代文で特にネックとなる時間配分、時間内に解ききるためのテクニックも詳しく解説します。
*この記事では主に、2023年度の高校3年生が対象となる共通テスト現代文の内容について扱います。履修および大学受験時の学年についてご注意ください。
1. 共通テスト「現代文」の特徴
共通テストの「国語」において、現代文は〈評論〉〈小説〉の2つの大問から構成されています。それぞれ50点満点の配点で、共通テスト「国語」全体の満点が200点なので、現代文で半分を占めることになります。問題形式は全て選択問題で記述問題はありません。
共通テストの現代文は、文章量がとても多く、解答時間がタイトになりやすい傾向にあります。さらに、課題文(メインの文章)に加えもう1つ、内容が関連した短めの文章を読んで答える思考力問題も登場するため、素早く情報を処理する力が必要です。具体的には、本文をまとめたノートやメモといった実用的な記録情報要素、または本文に関連した学術的文章などが出題に使用されます。
このように読解すべき情報量が多い共通テストの現代文ですが、そのぶん問題数自体は多くないため、読解問題の配点が1問につき7~8点と非常に高く設定されています。そのため、1問正解できるかどうかで得点が大きく変わることも特徴です。
2. 共通テスト「現代文」大問別対策法
2-1. 評論
大問1は評論文が題材となります。
最初に漢字問題が数問出題されます。本文中の熟語と同じ漢字を選択肢から答えるという出題形式なので、熟語の構成(熟語を組み立てる漢字どうしの関係性)を意識して対処すると効果的です。
読解問題では、課題文に関連する内容について、複数の選択肢の中から最も解答に適しているものを選ぶという形式で出題されます。選択肢だけでなく、本文の傍線部や設問自体をしっかり読み込み、「何が問われているのか」を理解することが大切です。
選択肢を絞り切れない時も、その問いの答えとして一番ふさわしいものを選ぶことを意識しましょう。内容自体に誤りはなく、消去できない選択肢が複数あった場合も、「問いの答えになっているのか」を考えることで絞り込むことができます。
本文に戻って内容を読み込む際は、特に指示語や接続詞が大きな助けとなるでしょう。
指示語が何を指しているのかを考えることで、指示語を含む文章、ひいては本文全体の理解がより深まります。問いに指示語が含まれる場合も多いので必ず確認しましょう。指示語が何を指すのか判断に迷う時は、指示語を対象候補の内容に置き換えてみることで文章の筋が通っているか、確認するという方法が有効です。
接続詞は後に続く文章の内容を予告してくれます。(例:なぜなら→理由が説明される、例えば→具体例が上がる)そのため、接続詞に着目することでそれぞれの文章の役割がわかりやすくなり、本文全体の構造をつかむことにも役立ちます。逆接の接続詞(「しかし」「けれども」等)の後には、筆者が本当に言いたいこと=筆者の主張が書かれている場合が多いので、特に意識してみましょう。
また、本文に関連して用意された文章を読む際は、常に本文の内容を頭の片隅に入れておきましょう。関連文章の設問では、本文の理解も問われることが多いので、共通点・相違点を整理しながら意識して読むことをおすすめします。
2-2. 小説
大問2は小説が題材となります。
小説は大学入試の個別試験では出題される大学・学部がかなり少ないため、共通テストでしか出会わないという場合も多く、対策が特に手薄になりがちです。過去問などを中心に出題傾向を押さえておきましょう。
最初に語彙問題が数問出題されます。紛らわしい選択肢が多く、文脈に合うかどうかだけで選択肢を選ぶと絞り切れないこともあるので、「辞書的に正しい意味であるかどうか」の判断基準を優先するのがおすすめです。
読解問題では、「事実(出来事など)+人物の心情」で構成される選択肢が用意され、本文の正しい解釈を求められるケースが多いです。消去法を使う場合は、主観が入りやすい「心情」の部分より、正誤を判断しやすい「事実」の部分を優先して解く方が安全です。
また、「事実」に対する「人物の心情」の関係性が誤っている選択肢が提示されることも多いので、本文を読む段階から「事実」と「心情」の関係性、結びつきを意識してみると、選択肢を絞る上での助けとなるでしょう。
3. 共通テスト「国語」の時間配分
共通テスト「国語」全体の解答時間は80分です。80分という限られた時間内に問題を解ききるためにも、大問ごとの時間配分や解く順番について事前に計画することがとても大切になります。
例を2つ紹介しますので、自分の解きやすい時間配分・順番を見つけるための参考にしてみてください。
3-1. 【例1】集中力のキープしやすさを重視!
●小説(20分)→漢文(13分)→評論(20分)→古文(17分)→見直し、予備(10分)
・比較的読みやすい文体である「小説」から解き始める。
・現代文の大問の間に比較的負荷の軽い「漢文」を挟み、集中力をキープ。
・漢文より読解問題が多い「古文」の時間を多めに確保。
・時間が押した場合を想定し、見直し・予備の時間は10分に設定。
3-2. 【例2】着実に得点しやすい問題から解く!
●漢文(10分)→古文(15分)→評論(25分)→小説(25分)→見直し、予備(5分)
・確実に得点を積み重ねるため、基礎的な内容も多い「古文」「漢文」を先に解く。
・「現代文」は文章量を考えて、〈評論〉〈小説〉それぞれ25分と長めに設定。
・読み疲れて集中力が落ちるのを防ぐため、より論理を捉える必要がある〈評論〉を解く。
・一度迷うと正しい選択肢を導くのに時間がかかりがちな〈小説〉は最後に。全体的な時間のロスを減らす。
・予備の5分は「現代文」の解答に不足した時間に。(それでも見直し1周分の2分程度はしっかり確保すること)
4. 時間内に解ききるには?
時間配分や解く大問の順番以外にも、時間内に解ききるコツや事前に対策できる勉強法があります。演習時のポイントと普段の勉強法、どちらも実践してみてください。
4-1. 演習時に意識すべきポイント
まず、本文を読む前に先に設問の内容を確認しておきましょう。事前に問いを把握することで、注視すべきポイントを絞って読み進めることができます。特に共通テストでは、文章全体の表現の特徴を問う問題もしばしば出題されるので、このような問題は事前に把握しておくと時間のロスを防ぐことができます。
また、問題を解く際は、解答を迷っている問題の選択肢で引っかかっている箇所に印をつけるなど、視覚的にわかりやすくすることで効率的な見直しにつながります。
4-2. 速読力を上げる勉強法
速読力をつけるには、何より普段から文章を速く正確に読む習慣をつけることが大切です。
現代文は英語のように一朝一夕で成果が表れにくいので、定期的に時間を計って読解問題に取り組むなど、長期的にトレーニングを継続することが必要になります。
同時に、現代文の語彙を増やすことも有効な方法です。わからない用語があるとそこで詰まってしまったり、誤読したりと時間のロスにつながりかねません。しっかり語彙の対策も積んでおき、スムーズに読解を進められるようにしておきましょう。
5. 共通テスト「現代文」対策におすすめの参考書
共通テスト「現代文」の対策におすすめの参考書を紹介します。
『大学入学共通テスト 現代文 実戦対策問題集 新版』(旺文社)
〈評論〉〈小説〉それぞれ5回分の演習問題が収録されています。例題を用いて共通テストの特徴や攻略ポイントが紹介されており、別冊の解答集では現代文の基本的な解法についても復習できます。
現代文に苦手意識がある、あるいは現代文対策を始めたばかりという人にもおすすめの1冊です。
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『共通テスト 過去問研究 国語』(教学社)
共通テストをはじめ、試行調査、センター試験も含む15回分の過去問が収録されています。これらの過去問を解く際には、時間配分や解く順番なども意識して本番に向けた演習を実践しましょう。
また、共通テストの過去問には数に限りがあるため、前身であるセンター試験の問題も積極的に活用しましょう。
『現代文 キーワード読解[改訂版]』(Z会)
現代文において重要な語彙160語が、イラストや入試の例題を用いて詳しく紹介されています。
「文化・宗教」「科学」などテーマごとに区切られており、評論の頻出テーマについても理解を深めることができます。演習で課題文の内容がなかなか理解できなかった場合、文章のテーマをこの参考書でもう一度振り返ってみることもおすすめです。
小説における重要語彙も50語収録されており、手薄になりがちな小説の語彙問題の対策にも役立ちます。
語彙力強化を目指して、本書を英単語帳のようにスキマ時間に活用することをおすすめします。
6. まとめ
「対策方法がわからない」という悩みを持たれがちな現代文ですが、特に共通テストでは解答の上で意識すべきポイントがいくつも存在します。語彙などの基礎知識も身に付けつつ、これから演習に取り組む際にぜひ紹介した解法のコツを意識してみてください。
また、共通テストにおいては時間内に解ききることが高得点のカギとなるため、戦略的に問題に取り組むことも重要となります。時間配分や効率的に解き進める方法を参考に、しっかりと攻略プランを立てることで高得点を目指しましょう!