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大学受験で必要な英単語の知識とは? ~どれだけ覚える?いつから覚える?~

2019.05.09

大学受験の対策に英単語の勉強が必要なことはわかっていても、それが具体的にどのような重要性を持つのか、英単語の「何」を「どのくらい」覚えなければならないのか、モヤモヤしている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、英語の「語彙力」を高めたいと思っている人のために、早い段階で知っておきたい英単語学習の基礎知識を解説します。大学受験に必要な語彙力をマスターするために、英単語集を「いつから」「どのように」覚えていくかについてもレクチャー。英単語学習についての疑問は、今ここで解消しておきましょう。

1. 大学受験で問われる英単語力とは?

どれだけの英単語を知っているか、すなわち英語の「語彙力」(ボキャブラリー)は、英文法と並んで、総合的な英語力の根幹を成す要素です。大学受験におけるその重要性は、逆に語彙力がないとどう困るのか、ということを考えてみるとよくわかります。

1-1. 英語長文が読めるように

多くの大学の英語入試問題で最も大きな配点を占めるのが「長文読解」です。十分な語彙力がなく、出題された英文の中に知らない英単語が多数含まれている状態では、当然のことながら文章の主旨を理解することができません。
仮に漠然とは理解できたとしても、自分より英単語の知識が多く語彙力の高い受験生に比べ、読解により多くの時間を要し、理解度でも劣るため、その分不利になってしまいます。
「知らない英単語は文脈から類推すべし」とよく言われます。もちろん試験中はそうするしかありませんが、初めからできるだけ多くの英単語を知っておくに越したことはありません。
配点の高い英語長文読解の理解度と読むスピードを高めるためには、豊富なボキャブラリーが欠かせないのです。

1-2. リスニングが聞き取れるように

ボキャブラリーが貧弱だと、リスニング試験にも苦戦することになります。自分のペースで読み進めることができる長文読解では、少なくとも「evolve?どんな意味だっけ・・・そうだ、『進化する』だ」というように、思い出すための時間があるのに対し、受験者の理解度などお構いなしに流れていくリスニング試験では、そのような猶予はほとんどありません。リスニング試験では相対的に易しい英単語が用いられるという事実を差し引いても、迷っている暇はないという点で、高度な語彙力が求められていると言えます。
英語リスニング試験で読み上げられるレベルの基本単語については、聞いた瞬間に意味が分かるようでないと対応できないということです。また、英単語を覚える際にスペリングと意味だけを暗記して発音を軽視していると、リスニング問題に対応するのは難しくなるでしょう。

1-3. 英作文が書けるように

英単語を知らなければ英文を作ることもできません。したがって、英作文対策の土台には、当然一定の英単語に対する知識が必要となりますが、英作文において求められる語彙力は、長文読解やリスニングに必要なものとは異なります
たとえ難関大学の入試問題であっても、英作文問題で難度の高い英単語を用いる必要はありません。学校の教科書に載っているレベルかそれ以下の語彙力で十分です。しかし、それらの基本単語を正確に運用する力が求められます

ひとつ例を見てみましょう。
例えば、次のような和文英訳の問題があったとします

《例題》
次の日本語の文を英訳しなさい。

19世紀、チャールズ・ダーウィンは生物学の調査を行うために、ガラパゴス諸島をはじめとする世界中のさまざまな地域を訪れた。

これに対し、誤りを含む次の回答例を見てください。

《回答例(※誤りを含む)》

In 19th century, Charles Darwin visited to various areas around world including Galapagos Islands in order to do research biology.

いくつ誤りを指摘できますか?
まず、この英文では定冠詞theが3つ不足しています。どこに入るか考えてみてください。
また、不要な前置詞がひとつあり、必要な前置詞がひとつ欠けています。
正しい解答例は次の通りです。

《解答例》

In the 19th century, Charles Darwin visited various areas around the world including the Galapagos Islands in order to do research on biology.

この中で、誤りを含む箇所に関係しているvisitとresearchという英単語は、中学で習うきわめて初歩的な単語です。
visitは「他動詞」(=目的語がある場合、前置詞は不要)なので、visited to various areasは不適切な表現です。
また、researchという英単語は動詞としても用いられますが、ここでは名詞です。「~に関する調査・研究を行う」という意味では、do research on/aboutという形になるため、biologyの前にはonやaboutなどの前置詞が必要です。
このように英作文では、「visit:訪問する」「research:調査」という英単語のスペリングと意味だけをセットにした知識では不十分で、文の中で正しく運用できるように語法・用法までしっかり押さえておく必要があるのです。これも、大学受験に必要な英単語の知識、語彙力の重要な側面です。

2. 英単語の「何」を覚える?

続いては、具体的に英単語の「何を」覚えたらよいのかということを見ていきましょう。
市販の英単語集を開いてみると、各単語につき、さまざまな情報が掲載されていることに気づきます。
仮に自分の使っている単語集でamazeという語が次のように説明されていたとしましょう。

amaze
~を驚かせる、感心させる 
[頻出]
be amazed at/by(~に驚嘆する、あっけにとられる)
[例文]
She was amazed at the beautiful scenery of the beach
彼女はその海岸の美しい景色に目を見張った。
[派生語]
形amazing:感嘆すべき、素晴らしい
名amazement:驚き、驚嘆

amazeという1語の単語に対して、語義(意味)、よく使われる形、例文、派生語といった情報が掲載されています。これらの情報はすべて暗記する必要があるのでしょうか。あるいはどういったことを優先的に覚えていったらよいのでしょうか。

2-1. スペリング・発音

「見出し語」(ここではamaze)のスペリング(つづり)とその意味を覚えるのは言うまでもありませんが、それに加えて正しい発音もしっかり覚えることが重要です。
先ほども触れたように、スペリングと意味だけわかっていても、リスニング試験には対応できません。
最近の英単語集は、音声ファイルのダウンロードサービスや音声がスマホで聞けるアプリなどが付いているケースもありますので、それらを存分に活用しましょう。

2-2. 語義(英単語の意味)

語義、すなわち英単語の意味についても当然覚える必要があります。
先ほど挙げたamazeでは、「~を驚かせる、感心させる」という単独の意味しか載っていないのでこれだけ覚えれば済みます。
しかし、次のような場合はどうすればいいでしょうか。

raise
①~を上げる、引き上げる
②(資金などを)集める、調達する
③(問題などを)提起する
④~を育てる、養育する

これらはどれも重要な語義で、4つとも覚えるのが理想ではありますが、単語集に載っているほかの英単語についても、最初から複数の語義を全て暗記するという方針にしてしまうと負担がかなり重くなります。自分の実力や学習計画に応じて、最初の1~2周目は1つめの語義のみを覚え、3周目以降に2つめ3つめの語義を覚えていく、というのが無理のない進め方です。

2-3. 語法・用法・イディオム

先ほどvisitやresearchについても触れたように、基本語(句)は英作文問題で正しく運用できるように、その使い方(語法・用法)や、よく使われる句動詞・イディオムの形まで身につける必要があります。
一方、ほぼ間違いなく長文読解でしか出てこないであろう難解な英単語については、そこまで踏み込んで覚える必要はなく、代表的な語義さえ覚えておけば十分でしょう。
志望校の出題する英文のレベルによって、自分が身につけるべき語彙力の性質も異なります。過去問研究を通じて、どのような語彙力が求められているかを確認することも大切です。

3. 大学受験の英単語学習を始める前に

3-1. 大学受験で必要な英単語数

英単語の覚え方がわかったら、次はそれを「どれだけ」覚えればよいのか、という疑問が湧きますね。
「○○大学を受けるならXX語覚えなければならない」というような明確な基準数は存在しませんが、目標別の理想的な単語数の目安は以下のとおりです。

(0)目標レベル・・・理想的な習得したい英単語数
(1)大学入学共通テスト(旧センター試験)で8割。中堅レベルの大学合格・・・1,800~2,000語程度
(2)GMARCHレベルの難関大学合格・・・3,000~3,500語程度
(3)とりわけ語彙レベルが高い問題を出題する一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学、東京外国語大学などの合格・・・4,500~5,000語程度

こちらで示した語数は、あくまで中学レベルの基本的な語彙力が備わった上で、受験対策用に改めて必要となる目安と考えてください。実際には英単語の暗記は単語集をベースにおこなっていくものなので、具体的な細かい数については、それほど気にしなくてもいいでしょう。単語帳を選ぶ際の参考にしてみてください。

3-2. 英単語学習はいつから始める?

実は、覚える英単語の「数」よりも、語彙力強化を「いつから始めるか」ということのほうがはるかに重要です。
英単語を覚え始めるのに早過ぎるということはありません。理想としては、高校1年生の時点で大学受験を見据えたボキャブラリー強化を始めておくべきです。
ただし現実的には、高校1~2年生ではまだ受験に現実味を感じられなかったり、部活が忙しくて思うように時間が確保できなかったりする人も多いでしょう。とはいえ「英単語を真面目に覚え始めるのは部活が終わる高3の夏以降でいいや」などと高をくくっていると痛い目にあいます。
どんなに遅くても高校3年生の春には、市販の英単語集を使った本格的な語彙力強化の勉強を開始するようにしましょう。高校2年生の夏くらいから始めれば、一般的な英単語集を3~4周する時間は確保できるでしょう。

3-3. 早い段階で英単語を覚えておくメリット

英単語の暗記を早く始めるべきなのには理由があります。
この記事の冒頭でも触れたように、語彙力は英文法と並んで総合的な英語力の根幹を成します。英語の土台を早い段階で盤石なものにしておけば、長文読解やリスニング、英作文の実力アップもスムーズに進むのです。
また、入試本番が近づいてくると、英語のみならず他の科目でも勉強しなければならないことがたくさん出てきます。受験勉強においては、ある程度実力がついてからでないと対策ができないもの(例:英作文、長文読解)と、それほど実力がない段階でも十分に勉強を進められるもの(例:語彙力強化)があります後者を早い段階で済ませておき、受験勉強後半で前者の対策に集中できるように勉強を進めるのが賢明と言えるでしょう。

4. 英単語学習に役立つおすすめ記事

語彙力強化については紹介したいことがまだまだたくさんあります。
StudiCoでは、この記事のほかにも英単語学習のための記事を用意しています。
気になるテーマの記事からぜひ読んでみてください。

>> 英単語の効率的な覚え方を伝授! ~学習スタートから仕上げまでを安心ナビゲート~

>> 東大入試に必要な英単語力を養うために ~おすすめ英単語帳3選と東大合格者の実践例~

5. まとめ

最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。

① 語彙力は長文読解・リスニング・英作文といった大学受験で問われる英語力を左右するカギ
・長文読解ではできるだけ多くの語(句)の意味を知っておくと有利。
・リスニングでは相対的に易しい語彙が用いられるものの、基本単語を瞬時に理解する必要がある。
・英作文では基本単語の「語法・用法」を知り、正しく運用する力が必要。

②英単語集の「何」を「どのように」覚えるべきか・スペリングと意味、そして正しい発音のマスターが最優先事項。
・どのような性質の語彙力を身につけるべきかは、志望校の出題傾向によって異なる。
・派生語や例文に手を出すのは3周目以降などで十分。

③英単語学習を始める前に知っておくべきこと
・必要な英単語数の目安
 共通テスト(旧センター)8割・中堅大レベル⇒1,800~2,000語程度
 GMARCHなどの難関大⇒3,000~3,500語程度
 語彙レベルが最難関(一橋、早慶など)⇒4,500~5,000語程度
・理想は高校1年生から学習をスタートしたい。高校2年生の夏くらいからでもある程度余裕を持って終えられる。遅くても3年生の春から始めること。
・受験勉強では、ある程度実力がついてからでないと対策ができないもの(例:英作文、長文読解)とそれほど実力がない段階でも十分に勉強ができるもの(例:語彙力強化)がある。語彙力強化を早い段階で済ませておけば、その後の受験勉強がスムーズに進む。

もっと早く知っておけば良かった…という人も、気がついた今日がスタートの日です!早速今から、大学合格のための英単語学習を始めていきましょう。

岡本 眞一郎 先生(武南中学・高等学校)
1983年より都立高等学校英語教諭として、都立青山高等学校、都立戸山高等学校、都立白鴎高等学校、2014年より埼玉県立春日部高等学校、埼玉県立浦和高等学校と首都圏の進学校を歴任。2018年4月からは、埼玉県私立の武南中学校・高等学校で教鞭を執り、多くの受験生たちの指導に当たっている。