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現役大学生から学ぶ!「生物」選択で広がる多様な進路の可能性

2024.04.08

共通テストにおいて、志望学部の系統を問わず受験が必要になることが多い「理科」科目。「高校での成績が良い得意科目だから」「点数が取りやすいと聞いたから」といった理由で選択していませんか。
せっかく勉強したことを大学受験だけで終わらせてしまうのは、とてももったいないです!大学入学後、さらには大学卒業後の進路についても考えた上で、選択科目を一度じっくり見直してみてはどうでしょうか。興味のある分野や将来の進路に繋がると思えば、受験勉強に一層力を注ぐことができます。
この記事では、大学受験で「生物」を選択した現役大学生にインタビューしました。なぜ「生物」を選択したのか、受験生時代の勉強法から進路を選んだきっかけまで、興味深いエピソードが満載!
科目選択や進路選びの参考にしつつ、将来の選択肢を広げてみてください。

1. 大学入試科目の「生物」について

高校で学ぶ「生物」では暗記すべき内容が多いため、大学入試での「生物」選択は暗記の得意な人に適しています。
もちろん思考問題も多く考える力も必要となりますが、考えるための基礎となるのは暗記した知識です。暗記を避けては通れないと考えた方が良いでしょう。
また、私立大学の個別試験では記述問題も多いため、知識を前提とした言語化能力も必要となります。満点を取ることは困難ですが、最低限の知識で得点が安定するという側面もあるので、やはりここでも基礎知識の理解とインプットが入試攻略の鍵となるでしょう。

2. 「生物」選択で広がる多様な進路

現在さまざまな大学に通っている6名の大学生に、同じ内容の質問を投げかけてみました。6名の共通点は、受験生時代に「生物」を選択したことです。

【質問項目】
(1)なぜ「生物」を選択したのか
(2)「生物」の勉強時間・勉強法
(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
(4)大学・学部を志望したきっかけ
(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
(6)現在の大学生活
(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
(8)今考えている進路・将来の夢
※(3)については、先輩たちが受験した時に使っていた参考書の情報をそのまま記載しています。利用する際には改訂版が刊行されていないか、最新の情報を確認してください。

2-1. 看護学部に進学 ~将来は小児専門看護師を目指す~(L.T.さん)

【合格大学】
東京医科歯科大学 医学部 保健衛生学科 看護学専攻 ★ここに進学!
・聖路加国際大学 看護学部
・東京慈恵会医科大学 医学部 看護学科
・杏林大学 保健学部 看護学科

(1)なぜ「生物」を選択したのか
私立大学の看護学部受験で使える理科科目が「生物」または「化学」であるケースが多く、「生物」がもともと得意だったので選択しました。

(2)「生物」の勉強時間・勉強法
第一志望の国立大学で必要とされたのが理科基礎科目だけで、「生物」は私立大学のみで必要でした。そのため模試や入試前に一気に詰めて勉強し、他の期間では休み時間などに軽く復習していました。
勉強法としては、まず資料集を中心に用語や定義を理解してから、問題集を1周目は丁寧に、2・3周目は間違えた問題を中心に解いていました。

(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
私は学校で配布された問題集と資料集を使用していました。問題集は『セミナー生物』(第一学習社)で、資料集は『スクエア最新図説生物neo』(第一学習社)です。

(4)大学・学部を志望したきっかけ
東京医科歯科大学には大学敷地内に附属病院があり臨床が近いという点と、看護学部の中では比較的入試のレベルが高く、優秀な学生が集まって切磋琢磨し合える環境が期待できたという点が大きな志望理由です。
また、医療系に特化していて視野は狭くなることが考えられましたが、医療の知識や経験を深く持つことが重要だと考えたため、医療職を志す仲間に囲まれた環境で過ごすことに魅力を感じました。
そして、国立大学は学費が安いという利点もあります。看護学部は総合大学の中でも学費が高いとされ、併願した私立大学では年間150万円以上かかる大学がほとんどでした。一方、医科歯科大学では年間70万円程であり、取れる資格は同じなので学費の安い大学を志望しました。

(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
学費や附属病院の有無、医学部医学科が設置されているかに加えて、看護学部の1学年の人数も調べました。
看護は手技の授業も多いため、1学年の人数が多いと一人ひとりを見てもらえないのではと考えたからです。資格は看護師と保健師を目指せるところを調べました。

(6)現在の大学生活
忙しいけれど充実しています。高校生物よりも細かい人体の構造や、より科学に近い生化学をやっているので、生物の知識が増える一方です。
勉強や実習に加えて、週3前後の練習があるダンス部に所属し、充実した日々を送っています。
また、看護学部には毎年病院実習があります。簡単に紹介します。
<1年生>期間:1週間
学内実習として病棟での感染対策や患者さんへの言葉かけなどを学び、その後実際に病棟での実習を行います。配属された科でそれぞれに担当看護師さんが付き、看護師の役割やチーム医療などを学びます。
<2年生>期間:2週間
看護学生1人につき1人の患者さんを受け持ちます。患者さんとの会話や電子カルテから患者さんの容態を把握して、自分で看護計画を立てます。
<3年生>期間:長期
後期の授業が実習になります。看護学生1人につき1人の患者さんを受け持ちます。1つの科に限られることなく、様々な科を順に実習していきます。
<4年生>期間:長期
それぞれの進路に合ったコースに分かれ、実習をします。私は保健師コースで保健所の実習があり、コミュニティでの保健師の役割なども学んでいきます。

(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
勉強や実習においてもう少し楽なのかなと思っていましたが、その分考えていたよりも充実しています。

(8)今考えている進路・将来の夢
将来の夢は小児看護専門看護師です。そのため、大学卒業後5年以上医療現場で、かつ3年以上小児科で臨床経験を積んだ後に、大学院に進学します。

2-2. 農学部に進学 ~将来は生物化学研究へ~(M.K.さん)

【合格大学】
東北大学 農学部 ★ここに進学!

(1)なぜ「生物」を選択したのか
高校時代、「生物」が好きで暗記も苦にならないと考えました。また、「物理基礎」の授業から苦手意識があったため、「物理」は選択しませんでした。

(2)「生物」の勉強時間・勉強法
毎日寝る前に30分くらい問題を解き、教科書と合わせてまとめノートを作っていました。
加えて、授業の復習は欠かさずおこなっていました。

(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
セミナー生物』(第一学習社)、『生物重要問題集』(数研出版)を使っていました。『生物重要問題集』は基礎知識を固めるために選びました。

(4)大学・学部を志望したきっかけ
高校3年生の夏まで明確な志望校は決まっておらず、東京の大学ではなく地方の大学に魅力を感じていました。東北大学は高校3年生の夏に行ったオープンキャンパスで、キャンパスや街の雰囲気が良いなと感じて志望しました。
生物や化学の勉強がしたかったのですが、具体的な進路が決まっていなかったため、幅広く自分の興味のある分野を学べる農学部を志望しました。

(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
東北大学の農学部に進路を決めた上で、専攻コースや研究室について調べました。
就職に関しては全く調べていませんでした。

(6)現在の大学生活
高校生物で得た知識が、大学の生命科学系の基礎になっているため、かなり役立っています。

(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
大学に入って、英語が想像以上に大事だと実感しています。

(8)今考えている進路・将来の夢
将来の夢はまだ決まっていません。まずは配属された研究室で頑張って、大学院に進学したいと思っています。

2-3. 農学部に進学 ~将来は食品研究職に就きたい~(Y.T.さん)

【合格大学】
明治大学 農学部 農芸化学科 ★ここに進学!
・東京農工大学 農学部 応用生物科学科

(1)なぜ「生物」を選択したのか
食品関係の仕事に就きたいと考えていて、微生物や細菌について大学で学びたいと思ったので生物を選択しました。

(2)「生物」の勉強時間・勉強法
高校2年生の終わりから高校3年生の前半にかけて集中的に塾で勉強しました。高校3年生の後半でメインの勉強を「化学」にシフトしたら成績が大きく下がってしまったため、「生物」は継続的に勉強した方が良いと思います。
問題集はひと通り解いて、模試の復習は欠かさず行っていました。「生物」の勉強のほとんどはテキストをひたすら読んでいました。

(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
田部の生物基礎をはじめからていねいに』シリーズ(東進ブックス)を使っていました。図や説明が分かりやすくてオススメです。書店で買えます。

(4)大学・学部を志望したきっかけ
農学部があって家から通いやすい大学を受験しました。明治大学は教授の熱意が高いイメージがあったのと、家から通いやすかったので最終的に進学先として選びました。

(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
最終的な進路決定の決め手になったのは、研究室とカリキュラムです。将来やりたいことに近い大学を選びました。

(6)現在の大学生活
大学受験での「生物」の勉強がかなり役立っていて、生物選択者に有利な授業が多いと感じています。
実験では最初から難しい専門的な内容に取り組み、レポートでは生物を理解していないと考察がかなり難しかったと感じています。物理選択で入学した人は少し大変そうです。

(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
忙しいとは考えていましたが、想像以上に大変な学科でした。実験レポートがかなり本格的なのが特徴です。授業はほとんどが必修科目で、授業もテストも難しく感じます。
同じ農学部でも他の学科とは雰囲気がけっこう異なります。

(8)今考えている進路・将来の夢
まず大学院に進学して、将来は食品メーカーの研究職に就きたいと考えています。
大学院はこのまま明治大学で進学するか、他大学の大学院を受験するかは悩んでいます。

2-4. 食環境科学部に進学 ~将来は食品関連企業への就職を目指す~(Y.A.さん)

【合格大学】
東洋大学 食環境科学部 ★ここに進学!
・法政大学 生命科学部

(1)なぜ「生物」を選択したのか
食品関連の仕事につきたくて、それに合った大学を受験するために「生物」が必要でした。

(2)「生物」の勉強時間・勉強法
「生物」は国立大学受験の共通テストのみ必要だったため、共通テスト直前までは週4時間ほどの勉強に留めていました。
共通テスト1か月前は1日1時間欠かさず勉強していました。

(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
参考書はあまり使ってなくて、教科書をひたすら読んだり、模試の復習をしたりしていました。あとは学校の生物の授業内での演習を全力で取り組んでいました。

(4)大学・学部を志望したきっかけ
食品開発をしたかったため、食品系の勉強ができる大学を選びました。

(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
研究室と就職先、取れる資格を調べて決めました。
法政大学では、生物中心で直接食品に関する研究室がありませんでした。一方、東洋大学では、管理栄養士の資格が取れました。

(6)現在の大学生活
基本的に平日は毎日大学に通っています。
管理栄養士が国家資格で、資格の受験資格を取得するには厚生労働省が定めた授業を受けなければいけないため、必修が多いのだと思います。

(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
食品に直接関係している授業が多くて想像以上におもしろいです。
必修が多くて1・2年生はほぼ1限から授業があるので、思っていた大学生活と少し違うかもしれません。ただ、教養科目が少ないため興味のない分野の勉強をする機会が少なく、そこはメリットだと思います。
しかし、やはり実験のレポートにはかなりの時間がかかり、実験に長時間拘束された上に単位が1単位という点についてはかなり大変です。それでも内容が興味のあることなので楽しく頑張れています。

(8)今考えている進路・将来の夢
管理栄養士の資格を取得し、食品関連の企業に就職したいと思っています。

2-5. 海洋生命科学部に進学 ~将来は水産加工業への就職を目指す~(T.K.さん)

【合格大学】
東京海洋大学 海洋生命科学部 ★ここに進学!

(1)なぜ「生物」を選択したのか
高校時代、「生物」科目が好きだったので選択しました。

(2)「生物」の勉強時間・勉強法
1日3時間程度勉強していました。問題演習を中心に課題点を教科書・資料集で確認していきました。

(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
生物標準問題精講』(旺文社)を使っていました。こちらは難関大学受験レベルの問題が主ですが、『生物基礎問題精講』(旺文社)も出版されていて、基本問題から応用問題まで収録されています。

(4)大学・学部を志望したきっかけ
高校で大学模擬講義をしてくれた教授の研究内容に興味を持ち、海洋学を視野に入れるようになりました。
その後自分でも色々と調べた上で、海という地球最大のフィールドを専門的に学ぶということに魅力を感じ、海洋学を学ぶことのできる大学を志望校に決定しました。

(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
研究室の研究内容と入試科目・配点を調べました。大学によって科目の配点割合が違うので、得意科目の配点の多い大学を調べてみるのもよいと思います。
他の同じような進路の大学は、「北海道大学 水産学部」「東海大学 海洋学部」「北里大学 海洋生命科学部」などがありました。

(6)現在の大学生活
多くの科目が生物系で構成されていて、高校生物の履修を前提としたカリキュラムになっている授業が多い印象です。

(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
大変な面ももちろんあるけれど、教授の人柄が尊敬できることと、好きな分野なので楽しく学べています。

(8)今考えている進路・将来の夢
大学院への進学を考えています。将来は水産加工・食品製造業へ就職予定です。
海洋大学は水産業界への就職が強いので入学してよかったと強く感じています。

2-6. 理学療法学科からスポーツ科学部に進路変更 ~将来はスポーツトレーナーを目指す~(K.S.さん)

【合格大学】
早稲田大学 スポーツ科学部 ★ここに進学!

(1)なぜ「生物」を選択したのか
高校時代、「生物」科目が好きだったので選択しました。
また、理学療法士としてスポーツ選手のリハビリなどに取り組む際に、生物の知識があることが目指す職業に適していると思いました。

(2)「生物」の勉強時間・勉強法
1日最低1時間は勉強するようにしていました。問題演習や模試を中心に間違えた問題を教科書・資料集で確認していきました。

(3)後輩受験生におすすめしたい「生物」の参考書
私は学校で配布された問題集と資料集を使用していました。問題集は『セミナー生物』(第一学習社)で、資料集は『スクエア最新図説生物neo』(第一学習社)です。
また、「生物」の学習に入る前に「生物基礎」が固まっていた方が、より「生物」の暗記もしやすいので、『宇宙一わかりやすい高校生物(生物基礎)』(Gakken)を使っていました。イラストや細かい説明が多く載っていてしっかりと理解することができます。

(4)大学・学部を志望したきっかけ
高校の部活動で怪我をして、大学病院で一緒にリハビリをしてくれていた理学療法士の方にお世話になり、その仕事に興味を持ちました。
初めは順天堂大学の理学療法学科を志望していましたが、理学療法士としての就職先などを調べていくうちに、理学療法士はスポーツ選手のリハビリだけでなく高齢者や一般患者の方と多く携わることが分かりました。
私はスポーツが好きで、理学療法士になりたいと感じた時もスポーツ選手の回復を手伝えるという点に惹かれていました。そのため、高校3年生の夏に進路を変更し、スポーツ科学部を目指すことにしました。
多くの大学のスポーツ学部が健康や保健を重視している中、早稲田大学のスポーツ科学部では本格的にレベルの高いトレーナーの指導が受けられること、大学内にハイレベルなスポーツ選手が所属しているため、実際に部活動などでトレーナーとしての経験を積めるということが大きな魅力だと感じました。

(5)受験や進路を検討する上で調べたこと
興味を持った職業が自分の想像している仕事内容と同じなのか、他に自分のやりたいことと合う仕事があるかもしれない、ということを調べました。受験科目が変わってしまうことがあるため、早めに調べておくことをおすすめします。
また、スポーツ科学部に進路変更して受験科目が変わっても、受けることができるのかという観点で受験科目を調べました。

(6)現在の大学生活
教養科目はほとんどなく、解剖学や栄養学、心理学、経営学などのスポーツに関連した幅広い分野を学んでいます。
全国から国際レベルのスポーツ選手が入学しており、学年の半数ほどを占めているため、多様な友達が多くできてとても充実した楽しい生活を送っています。

(7)入学前にイメージしていた大学生活とのギャップ
部活動や海外遠征などで忙しい選手が多く在籍するため、オンデマンドの授業があったり筆記でのテストが少なかったりと、想像よりゆとりのある大学生活になっています。
とはいえ、そのぶんレポートが多く部活動にも所属するため、授業外での自由な時間はあまり確保できていません。ただ、スポーツ好きにはたまらない環境になっています!

(8)今考えている進路・将来の夢
スポーツ科学部からは一般企業に就職する人も多くいますが、私はスポーツトレーナーを目指し資格取得に向けて勉強をしていきます。
まずは実業団などのスポーツチームに所属することを目標にし、経験を積んだ後にプロや選手専属のトレーナーになりたいと考えています。

3. まとめ

大学受験で「生物」を選択した先輩たちのバラエティに富んだ現在と未来、――進路や将来を考える上での選択肢は広がりましたか?
世の中にはさまざまな職業が存在します。受験勉強が本格的になる前にたくさん調べて、興味のある分野・職業を見つけてみてください。また、先輩たちも志望大学を検討する上で、偏差値や知名度ではなく、カリキュラムや研究室など「将来のために学べること」をしっかり調べていましたね。
進路が決まると、受験勉強へのモチベーションもきっと高まりますよ。ぜひ自分の興味のある分野を見つけて、科目選択にも活かしてください。

StudiCoサポーター K.S.
早稲田大学 スポーツ科学部 合格
(ほか取材協力)
東京医科歯科大学 L.T.
東北大学 M.K.
明治大学 Y.T.
東洋大学 Y.A.
東京海洋大学 T.K.