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大学受験の世界史で差がつく「文化史」 ~効率的な勉強法とおすすめ参考書~

2019.06.13

大学受験を控え世界史の勉強を進めているけれど、「文化史」まではなかなか手が回らず、どこまで覚えるべきなのか、文化史の学習には二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか。
センター試験や国公立大学2次試験および私立大学入試の世界史において、文化史がどのくらい出題されるのか、どの程度の知識を覚える必要があるのか解説します。効率的な勉強法と、頼りになる参考書も必見です。

1. 受験世界史で「文化史」を学ぶ重要性

大学受験の世界史対策において、「文化史」の学習を敬遠する人もいるでしょう。暗記すべき事項が非常に多いにもかかわらず、実際の入試ではそれほどたくさん出題されないのでは…と思われているのが原因のようです。
しかし、実際はどうなのでしょうか。事実を調べずにイメージだけで切り捨てるのはもったいないかもしれません。
結論を言うと、文化史は大いに力を注いで学習すべき分野なのです。
理由は2つ。第一に、文化史は対策が手薄になりがちな分野なので、ここを確実な得点源にできれば、ライバルたちに差を付けられる可能性が高まるということ。
第二に、実は文化史は決して出題数が少ない分野ではなく、むしろセンター試験から国公立・私立大学の入試まで、それなりに大きな比重を占めているということ。そのため、世界史では文化史の習熟度が合否を分けるということも十分にあり得るのです。

2. 「文化史」の世界史での出題率は?

大学入試の世界史において、文化史に関わる問題は具体的にどの程度出題されているのでしょうか。
大学や年度によって出題量が異なりますが、過去の例を見てみましょう。
センター試験の世界史Bは例年36題の問題から構成されており、そのうち文化史が占める問題数は2019年が9題、2018年は6題、2017年は3題でした。2016年は10題もの出題があり、これは全体の約27%にも上ります。
私立大学でも、学部や年度によって異なるものの、文化史の出題は決して少なくありません。特に慶應義塾大学や早稲田大学などの難関私立大学では、文化史の十分な対策が必要です。
国公立大学では論述問題で文化史が問われることもあります。東京大学、京都大学、一橋大学の過去の入試における文化史の出題例を見てみましょう。

●東京大学
・13〜14世紀の日本列島からヨーロッパに至る交流の諸相(2015年)
・13世紀までのアラブ・イスラーム文化圏をめぐる動き(2011年)

●京都大学
・イギリス・プロイセンにおける啓蒙思想の影響(2016年)
・魏晋南北朝時代の仏教・道教(2012年)

●一橋大学
・ヨーロッパの「空間革命」/歴史学派経済学と近代歴史学(2018年)
・ベルリンにおける2つの聖堂建設の宗教的・政治的背景(2016年)

十分な文化史の知識がなければ、難関国公立大学の論述問題に対応できないことが分かると思います。どの大学を受験するにせよ、文化史の学習は避けては通れないと言えるでしょう。

3. 対策はいつから始めるべき?

とはいえ、世界史ではただでさえ通史を覚えるのにも苦労するのに、いつから文化史を覚え始めればよいのか…という疑問が浮かんできますね。
基本的には学校の進度に合わせるのが効率的です。大きく分けて進め方は2通りあります。
教科書通りの順番で学習する学校では、教科書の構成にしたがって、学習する単元ごとに文化史を学習します。
例えば、「古代ギリシア→ギリシア文化→古代ローマ→ローマ文化」のような形です。この場合は世界史学習を始めてすぐの、高校2年生の初めごろから文化史を学習することになります。メリットとしては、各単元とセットで学習するので、歴史の流れと文化を関連付けて記憶しやすいという点があります。しかし、デメリットとして、文化史としての流れをつかみづらくなるというおそれもあります。
一方、通史をすべて終えてから文化史を扱う学校もあります。
この場合、高校3年生の中頃になってから文化史を学習することになりますが、デメリットとしては、模試などで文化史が出題されてもあまり答えられないという点があるでしょう。高校3年生になっても文化史の学習を全くしていないと焦るかもしれませんが、その分、通史は早いうちに学び終えるというメリットがあります。歴史の流れ全体がすでに頭に入っているので、文化史を時代ごとに覚えていくのが比較的楽になります。
いずれにしても、文化史は比較的遅い時期から本格的な学習を始めても間に合うので、早く学習を開始することに必要以上にこだわらなくても構いません。まずは歴史の流れ(通史)をつかむことを優先しましょう。

4. 世界史の文化史にはどの程度の知識が必要?

文化史はどの程度の知識があればよいのでしょうか。これについても、実際の出題例を見てみましょう。
2019年のセンター試験では、文化史を問う問題の1つに次のようなものがありました。

第2問
問3
[・・・]事績や戦争の記録について述べた文として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

①アショーカ王の石柱碑が、ガンジス川流域の各地に建てられた。
②カエサルが、『ガリア戦記』を著した。
③バイユーの刺繍画(タペストリ)には、マジャール人によるイングランド征服の様子が描かれている。
④ダヴィドが、「ナポレオンの戴冠式」を描いた。

(センター試験世界史B・2019年・本試験)

「バイユーの刺繍画(タペストリ)」は多くの教科書にその写真が載っていますが、仮にこれが分からなかったとして、「イングランドを征服したのはマジャール人ではなくノルマン人」という基礎知識があれば、③は誤りだと分かります。また、もし③が誤りだと分からなかったとしても、他の3つの選択肢は基本事項であるため、消去法で解答を導くこともできるでしょう。
このように、センター試験の文化史は、基本的な知識があれば解ける問題がほとんどです。教科書レベルの文化史の知識を覚えていれば、おおむね対応できるでしょう。
それに対して、難関私立大学では正誤問題や記号選択問題などで、教科書レベルを超えたものが出題されることもあるため、資料集に掲載されているものまで押さえておく必要があります。明らかに受験世界史レベルを逸脱しているようなものもまれに出題されますが、そのような問題は受験生全体の正答率も低く合否を左右することは滅多にないので、そうした「超難問」「奇問」に翻弄されるよりは、文化史の基本知識を押さえることに注力すべきです。

注意すべきなのは、実際には基本的な用語であるにもかかわらず、問われ方がやや難しいというケースです。
例えば、2019年の慶應義塾大学文学部では、空欄補充問題で『夜警』が正解となる問いがありました。『夜警』がオランダの画家レンブラントの作品だということは基礎知識ですが、この問題では、「市民によって組織された自警団の集団肖像画」という問題文の記述から答えを出す必要がありました。これは、作品の名称だけでなくその内容まで理解していなければ解けない問題であると言えます。
つまり、難関私大学を受験する人は、文化史について「作者・作品の丸暗記」ではなく中身まで知っておくことが大切だということが分かります。資料集をよく見て学習する習慣をつけていればそのような問題にも対応できるでしょう。

5. 文化史を効率的に学ぶ3つのポイント

文化史を効率よく学習する方法はあるのでしょうか。
文化史を問う問題では、作品名や作者名などが問われたり、文章の正誤を選択したりする問題が多く見られます。「通史だけでも大変なのに、文化史まで手が回らない」と思う人も多いでしょう。一問一答形式で知識を詰め込むのも一つの手ですが、漫然と暗記するだけではなかなか定着しにくいのが文化史です。そこで、ここでは文化史の効率的な学習方法について3つの観点から考えてみましょう。 

5-1. 出題頻度が高いものから優先して覚える

まず、出題頻度が高いものから優先して覚えることがポイントです。
難関大学を目指す受験生にありがちなのが、あらゆる知識を網羅しようとして挫折してしまうというケースです。文化史についてもこれは当てはまります。
初めにきちんと「幹」(大きな流れ、基礎的な知識)をつくることに専念すれば、そのあとに「葉」(細かな知識)をつけやすいというのが世界史の鉄則です。文化史でまず覚えるべきは、教科書で太字になっているもの・教科書に写真・図版が載せられているものです。
まずは教科書レベルを完璧に習得し、問題演習を行う過程で遭遇した知らない文化史の知識を補強していくのがよいでしょう。

5-2. 時代背景と関連付けて覚える

2つめの方法は時代背景と関連付けて覚えることです。
文化史を一問一答スタイルで暗記するのはよいのですが、それだけだと機械的な暗記に終始してしまいがちです。暗記作業に入る前に、まずは一つ一つの文化史の知識がそれぞれの時代の中でどのような意味を持つのかを理解すれば、より記憶に残りやすいでしょう。
中国史を例にとれば、唐代につくられたラクダに乗った胡人をかたどった唐三彩は、西方から文化が流入し国際色豊かであった唐ならではのものです。宋代に成立した朱子学で「華夷の別」が強調されたのは、北方民族の侵入による華北の混乱という背景が考えられます。
このように、当時の政治状況・国際関係と文化を関連付けることで、頭に入りやすくかつ定着しやすくなります

5-3. 「本物」に触れる

3つめの方法として、できればそれぞれの作品について「本物」に触れるようにしましょう。
もちろん、美術作品・工芸品を美術館や博物館に行って鑑賞する、文学作品であれば実際にそれを読む、というのが理想ではありますが、すべてを鑑賞するのは不可能です。ここで言う「本物」とは、資料集に掲載された写真・絵画などのことです。
例えば、「ガンダーラ美術はヘレニズム文化の影響を受けている」と言葉だけで覚えようとしても、具体的にどのような事柄を指しているのかわからなければあまり意味はありません。実際に資料集に掲載されたガンダーラ仏を見て、その髪や服がヘレニズムの彫刻からどのように影響を受けているか確認することで、記憶に定着しやすくなるとともに、実際の入試に対応する力がつきます。
事実、近年の入試では画像資料を伴う出題が増加しているため、普段の学習時から必ず資料集を見る習慣をつけましょう
また、文学作品については、受験勉強の間に実際に目を通すというのはなかなか難しいでしょうが、作家や執筆された時代、おおまかな内容やその作品が持つ歴史的意義といった基本的な情報は知っておかなければいけません。

6. 文化史理解に役立つ参考書・書籍

文化史をまとめて勉強したいときにおすすめの参考書・書籍を紹介します。

これ1冊!世界文化史 これ1冊!世界文化史
地歴
世界史
これ1冊!世界文化史
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村山秀太郎/著
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これ1冊! 世界文化史』(アーク出版)
オンライン予備校「スタディサプリ」の人気講義「村山の世界史(文化史編)」を書籍化した参考書です。歴史の流れの中で文化史について分かりやすい語り口で解説してくれます。
かなり分厚い本ですが、その分、本書を読み込めば、難関大学に対応できるレベルの文化史の知識を習得することができるでしょう。

タテヨコ総整理 世界史×文化史 集中講義12 新装版 タテヨコ総整理 世界史×文化史 集中講義12 新装版
地歴
世界史
タテヨコ総整理 世界史×文化史 集中講義12 新装版
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神余 秀樹/著
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タテヨコ総整理 世界史×文化史 集中講義12 新装版』(旺文社)
文化史を12講に分けて解説した、シンプルな構成で使いやすい1冊です。
左ページに文化史で覚えるべき事項が赤シートで隠せるように整理されており、文化史に特化した暗記作業に向いています。
右ページには解説やエピソードが講義形式で豊富に掲載されているため、文化に関する理解をより深めるのに役立ちます。

鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
受験向けの参考書ではありませんが、西洋の絵画・彫刻・建築などについて理解を深めるのに役立つ1冊です。
古代から現代までの美術作品がフルカラーで豊富に掲載され、解説も非常に分かりやすく平易な言葉で書かれているので、どんどん読み進めることができ、実際に美術館に足を運びたくなるような本です。Q&A形式で重要な知識がまとめられているのもポイントです。
西洋美術のみが対象ですが、美術への理解が深まるとともに、楽しく美術史を学ぶことができるのでおすすめです。

7. まとめ

受験世界史「文化史」を学ぶ上でのポイントをまとめておきましょう

受験世界史における「文化史」
文化史は対策が手薄になりがちな分野なので、ここを確実な得点源にできれば、ライバルたちに差を付けるチャンスです。
文化史は重要度が低いと勘違いされがちですが、センター試験から国公立・私立大の入試に至るまで、それなりに大きな配点を占めているので、しっかりと対策することが必要です。
特に難関国公立大学入試では論述問題として問われることもあるので要注意。

どのレベルまで覚える必要がある?
センター試験では「教科書レベル」で十分対応可能ですが、難関私立大の入試対策では「資料集」まで押さえておく必要があります。
さらに難関私立大を受験する人は、文化史について「作者・作品の丸暗記」ではなく中身まで知っておくことが大切です。

文化史を効率的に学ぶ3つのポイント
・出題頻度が高いものから優先して覚える
・時代背景と関連付けて覚える
・「本物」に触れる

時代背景と関連付けて覚えることで、結局は通史の理解も深まります。文化史の知識を武器にして、本番に臨みましょう。

松屋直子
大手学習塾で集団指導・個別指導を経験したのち、神奈川県の私立中高一貫校で社会科専任教員として5年間勤務。専門は世界史。学生時代にシリアに留学した経験を持つ。現在は子育てに奮闘中。
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