暗記事項が多い世界史の受験勉強を進めるにあたり、じっくりと教科書を読むべきか、それとも大量の問題を解くべきか、悩む人も多いでしょう。有効な勉強法の1つとして、自分なりの「まとめノート」を作るという手もあります。ただ、ノート作りは時間や手間がかかるのも事実。
この記事では、世界史の「まとめノート」を作るメリットと注意点、さらに「ノート作り」の際に知っておきたい、学習効果を高めるポイントも解説します。
※この記事は2019年7月に書かれた内容を、一部最新の情報にリライトしたものです。
1. 世界史「まとめノート」作りのメリットと注意点
学校や予備校では、板書をノート(授業用ノート)に取らせたり、書き込み式のプリントを配布したり、授業スタイルは先生によって様々ですが、授業用のノートやプリントとは別に、受験に向けて知識を整理するため、自分で「まとめノート」を作るという学習法があります。
特に大学受験で世界史を選択する場合は、覚えるべきことが膨大にあり、しかもそれらは複雑に関連し合っているため、自分なりにノートにまとめることは大いに意義があります。その反面、やり方を間違えると、かえって貴重な勉強時間を失ってしまうリスクもあるのです。
まずは、知識を整理するための「まとめノート」作りには、どのようなメリットがあるのか、どのような点に注意すべきかということを押さえておきましょう。
1-1. メリット(1)効果的に復習できる
ノート作りの1つめのメリットは、効果的に復習を進めることができる点です。
世界史の勉強でつまずく人にありがちなのが、授業でどんどん単元が進んで復習が追いつかず、既習事項のインプットが不十分なために、新しい知識の吸収ができないというケースです。
そのような人は、学習した内容をノートにまとめることで知識を整理することができます。また、その過程で浮かび上がってきた疑問点などがあればそれについて調べ、知識を補強することも可能です。
理想は、授業を受けるたびに、その日に習ったことをノートにまとめるといった作業を習慣化することです。そうすることで、次の授業の学習内容がスムーズに頭に入ってくるようになります。授業ごとにノート作りをすることが難しい場合は、定期試験の前にテスト範囲のまとめをおこなうのがおすすめです。
受験の直前になってから、世界史の全範囲をノートにまとめようとしても、まず時間が足りず、完成には至りません。ポイントは、授業ごとや定期試験といったタイミングを利用して、できるだけこまめに知識の整理をおこなうということです。
1-2. メリット(2)情報を一元化できる
もう1つのメリットは、「ノート作り」によって「情報を一元化できる」ということです。
学校の授業で使用する教科書や資料集、プリント、予備校で使用するテキスト、自分で買った問題集や用語集など、受験世界史では使用する教材も多岐にわたります。そのため、知識の確認をおこなう際、「何かの参考書で読んだけど、どれに載っているか忘れてしまった」といった事態も起こりえます。
自分にとって新しい知識、特に苦手意識がある部分、自分なりに整理しておきたい事項については、必ず自分のノートにまとめるということを習慣化しておけば、「あれ、どこに書いてあるんだっけ」といって何冊もの教材を探し回る手間が省けます。
1-3. 注意点(1)「ノートまとめ=勉強」ではない
こうしたメリットがある一方、ノート作りには注意すべき点もあります。
まず、「ノート作り」をするだけで勉強した気になってしまうという人は注意が必要です。
書くことで頭に入るという人はよいのですが、時折ノート作りがただの「手の運動」になってしまう人がいます。言うまでもありませんが、「ノート作り」は、知識を整理し、それを頭に入れるためにおこなう作業です。「ノート作り」が、教科書や参考書、授業プリントの「丸写し」になってしまうようなら、授業ノートやプリントに必要なことを書き込む・書き足す方がよほど効率がよいでしょう。
1-4. 注意点(2)手間と時間がかかる
もう1つの注意点は、「ノート作り」は非常に時間がかかるということです。
大学受験で必要な世界史の全範囲をノートにまとめるのはかなりの時間と手間を要します。特に、ノートの「出来上がりの完成度」にこだわり過ぎてしまう人は要注意です。
ノートを作る目的は、見た目がきれいなノートを作ることではなく、学習の効率化を図ることにあります。カラーペンの色使いなどにこだわるあまり時間がかかり過ぎてしまって、肝心の学習時間が失われてしまうようでは本末転倒です。
もしあなたがすでに高校3年生で、これからノート作りを一から始めようと検討しているなら、あまりおすすめはできません。とりわけ、受験直前期の勉強時間が限られている時には、情報整理よりも問題演習を数多くこなすことの方が重要です。優先順位を間違えないようにしましょう。
このように、自分独自の「ノート作り」は、作成する時期や自分の性格などによって効果の程が異なってきます。
「ノート作り」によって学習がはかどり、大いに効果を発揮する人がいる一方、授業ノートやプリントをベースに学習を進め、それらに書き込みをし、学んだ単元をすぐに問題演習すれば十分という人もいます。
自分にはどのような学習法が向いているか、よく考えた上で「ノート作り」に取り組んでみてください。
2. 世界史「まとめノート」作りの5つのポイント
続いて、世界史の「まとめノート」作りに役立つ5つのポイントを解説していきます。
2-1. 丸写しでは意味がない
教科書や参考書をノートに丸写しするだけでは意味がありません。丸写しではノートを作る際に頭を使いませんし、教科書の複製ができあがるだけです。
自分なりに工夫をして、表・箇条書き・図・地図を使ったり、矢印で因果関係を整理したりしながら、そのプロセスで理解が深まり、知識が補強されるように意識しましょう。
2-2. 地図で整理する
たまに、「世界史は歴史の勉強だから、各国の位置関係や地理的な知識はそれほど重要ではない」と誤解している人がいますが、世界史において地理的な知識はきわめて重要です。
世界史を学習する際は、文字だけでなく地図を中心に据えて、王朝の時代ごとの領域の変遷や、各勢力の友好・対立関係などをまとめることをおすすめします。視覚的にも頭に入りやすく、同時に記憶にも残りやすくなります。
特に、模試の「解答・解説」は地図や資料が豊富なので、素材として大いに参考にしましょう。
2-3. 時間をかけ過ぎない
初めから時間をかけてノートを作りこむ必要はなく、最初はシンプルで構いません。
簡単にまとめた上で、問題演習などを通して学んだことをあとからノートに付け足していく方が勉強効率もよいでしょう。
2-4. 余白を作っておく
最初からぎっしりと書き込むのではなく、余白を残しておきましょう。そうすることで、後から身につけた知識を書き込むことができるからです。
ルーズリーフを利用するのも、ページを増やしやすいのでおすすめです。
2-5. 色使いはほどほどに
ノートをまとめる際に、適度に色ペンを使うのは効果的です。
しかし、その目的は、重要度のランクや、人物や地名などカテゴリーの分類を色によって可視化することであって、見た目を美しくすることではありません。色は数種類で十分で、色の種類が多すぎると何が重要なのかという肝心なポイントがぼやけてしまいます。また、色使いにこだわりすぎるのは時間と労力の浪費にもつながるため、ほどほどにしておきましょう。
3. 世界史「まとめノート」作りのお手本になる参考書
お手本になるような、優れた「まとめノート」を参考にするのもおすすめです。
『カリスマ講師の 日本一成績が上がる魔法の世界史ノート』(KADOKAWA/中経出版)は、代々木ゼミナールのカリスマ講師・佐藤幸夫先生の板書をまとめたフルカラーの「まとめノート」です。
これを参考にして自分なりのまとめノートを作ってもいいですし、この参考書をそのまま学習に役立てることも可能です。非常に分かりやすく、適度な情報量に整理されているので、世界史が苦手な人でも親しみやすいものになっています。
4. 世界史「書き込み式ノート」も活用しよう
「まとめノート」は、必ず一から全て自分で作らなければならないというものではありません。比較的時間をかけずにノートをまとめたいなら、市販の「書き込み式ノート」もおすすめです。
すでに情報が整理されているので、空欄に重要語句を補充したり、重要箇所にマーカーを引いたり、書き込みを追加したりすることで、自分なりのノートを作ることができます。
『詳説世界史 改訂版 学習ノート 上』(山川出版社)
『詳説世界史 改訂版 学習ノート 下』(山川出版社)
山川出版社の教科書に準拠した、上・下巻に分かれた書き込み式ノートです。
見開きの左ページは教科書の記述内容に沿って情報が整理され、空欄に重要語句を書き込む形式になっています。右ページは表や地図はありつつも大部分が空白になっています。
そのため、教科書内容についてはわざわざ自分でまとめる労力を省くことができ、右ページに自分の好きなように情報をまとめることができます。時間をかけすぎずにオリジナルノートを作りたいという人にはおすすめです。
大学受験 ココが出る!! 世界史ノート 歴史総合,世界史探究 四訂版
0
『大学受験 ココが出る!! 世界史ノート 歴史総合,世界史探究 四訂版』(旺文社)
情報が盛りだくさんの書き込み式ノートです。各単元の始めの「ココが出る!」で勉強のポイントが把握でき、「まとめ図」では単元の流れを俯瞰的につかむことができます。
また、単元ごとに「実践演習」がついているところも特長です。まとめるだけで終わってしまう人が多いのがまとめノートのネックですが、本書は覚えた知識をその場で確認することができるので、まとめノートと演習にセットで取り組みたい人にはおすすめです。
5. まとめ
大学受験対策に有効な世界史の「まとめノート」作りについて、ポイントを振り返りましょう。
<「まとめノート」作りのメリットと注意点>
復習ツールとして活用し、毎回の授業後や定期試験といったタイミングを利用して、こまめに知識の整理をおこなうとより効果的。種々の教材が持つ情報を一元化できるという側面も。
ノート作りはあくまで知識の整理とインプットが目的。時間がかかる作業であることを意識して、問題演習のための時間もしっかりと確保すること。
<ノート作りの5つのポイント>
(1)教科書や参考書の丸写しはNG
(2)地図で整理する
(3)時間をかけ過ぎない
(4)余白を作っておく
(5)色使いはほどほどに
暗記事項が多い大学受験の世界史において、自分のために情報をまとめたノートは、入試本番に向けて最強の武器にもなり得ます。
世界史ならではの「まとめ方」に注意しながら、ノート作りに取り組んでみましょう。