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大学受験における「模試」との上手な付き合い方 ~受験生必見の“模試マニュアル”~

2024.05.21

「模試」といえば、志望校の判定や偏差値などリアルに自分の現状がわかる結果に、一喜一憂することも多いかもしれません。――実は模試には、ただ成績の結果を見て終わるだけではもったいない、様々な効果があるのです!
上手に活用できれば、長い受験勉強の中でも強い味方になる「模試」。受験生が模試を受けるメリットをはじめ、模試を受ける準備段階~受験後まで「模試との上手な付き合い方」を詳しく紹介します。

1. 受験生が模試を受けるメリット

学校や予備校で模試を受けることに対し、もしかすると「受験期に勉強時間を削ってまで受けること」に抵抗を持ったことがあるかもしれません。どの学年でも模試を受けるメリットはありますが、その中でも“受験学年だからこそ”模試を受ける意義を紹介します。

●メリット(1)志望校との距離を具体的な数字で測ることができる
模試を受けることで自分の実力・現状を客観視することができ、今後の勉強計画の指標になるでしょう。
また、自分で勉強しているだけでは気づきにくい苦手分野や学習の偏りを確認でき、「今後やるべきこと」がより明確になります。

●メリット(2)受験勉強のモチベーションになる
志望校判定や成績順位が上がることで勉強の成果が目に見える形で確認できるため、受験生活の大きなモチベーションアップに繋がります。反対に結果がよくなかった場合は、良い意味でのプレッシャーや緊張感といった効果をもたらします。
模試の結果によって気持ちが左右されがちですが、逆に「勉強のモチベーションを上げるために模試の結果をうまく活用する」という心持ちで受けてみましょう。

●メリット(3)試験慣れすることができる
入試の本番においては、精神面や体力といった学力面以外の要素も非常に重要になります。
試験においてうまくいかなかった時に気持ちを上手に切り替えることや、1日集中力を切らさずに複数科目の試験に連続して取り組むことは、普段の受験勉強の中ではなかなか身につけるのが難しいでしょう。模試はその多くが試験会場で実施され、会場の独特の緊張感や1日を通して実施される点など、大学入試本番と同じような環境で試験に挑むことができます。
模試で試験慣れしておくことで、「本番で実力を出し切る力」を身につけましょう。

2. 【受験前】模試受験の計画を立てる

2-1. いつ・どのくらい模試を受験する?

どの時期にどのくらい模試を受けるのか、あらかじめ見通しを立てておくことをおすすめします。
模試によっては申し込み締切日が早いことや、定員に達した時点で締切前に受付を終了してしまうこともあるため、事前に計画を立てて動くことが重要です
また、模試の受験スケジュールを早めに立てておくことで、そこから逆算して勉強計画を立てやすくなるというメリットもあります。「秋は模試に時間を取られて思ったより勉強できなかった」という後悔もよく聞かれるので、模試の受験をマイルストーンに置いて、余裕を持った勉強計画を立てるようにしましょう。

受験回数・頻度としては、志望校・受験形式にもよりますが、月に1回以上は受験することをおすすめします
1ヵ月に1回以上受験することで、自分の現状把握ができて早いうちから勉強計画を軌道修正することが可能になります。
また、秋以降~年末の期間は模試自体の実施が増え、模試の種類も多様化していくため、月1回のペースにプラスして、大学入試本番の受験方式と近い模試はなるべく多く受けておくようにしましょう。

2-2. どの模試を受ける?

大学受験における模試の種類を、形式・予備校の種類ごとに紹介します。自分の志望校や目的に合わせ、受験する模試を検討する際の参考にしてください。

【模試形式の種類】
共通テスト模試
問題形式・内容ともに「大学入試共通テスト」を模しています。
共通テストの特徴に沿って、全問マーク式で知識問題だけでなく思考力を問うような出題も多いです。問題の分量が多いため、解答のスピード力を測りたい場合にもおすすめです。
また、英語のリスニング試験を体験できるのも大きなメリットです。
●記述模試
国立大学の二次試験、私立大学の個別試験に対応する模試です。
国語の記述解答、英作文や、数学の証明など、アウトプット力を問う重厚な問題が多いです。
記述問題が少ない一部の私立大学を志望している場合は負担が大き過ぎるかもしれませんので、自分の志望大学の出題傾向を確認した上で受験を検討しましょう。
●冠模試
「東大オープン模試」「早慶プレ模試」など各大学の出題傾向に合わせて作られた模試であり、おもに旧帝大、関東では早稲田大学・慶應義塾大学が対象校となります。
各大学の志願者が主な受験者層なので、実際に受験するライバルたちの中での自分の立ち位置がわかる点、実際の入試内容と近い問題で構成されている点から、他の模試に比べて入試本番の再現性が高い模試といえるでしょう。
志望大学の冠模試が実施される場合は、他の模試よりも優先的に受験することをおすすめします

【予備校模試の種類】
各予備校の模試ごとに受験者層や難易度が異なるため、それぞれの模試の特徴を確認しておきましょう。
●進研模試
受験者の母数自体が大きいため受験者層の幅が一番広く、偏差値も比較的高く出やすい模試です。
●河合模試
受験者層は平均的。模試の種類も様々で、各模試の中でも偏差値の標準目安とされることが多いでしょう。
●駿台模試
受験者層は難関大学を目指す人がボリュームゾーンと高めになっています。試験問題も難易度が高く、記述模試が充実していることも特徴です。
●代ゼミ模試
冠模試が充実しており、早稲田大学・慶応義塾大学向けの単体模試の実施がある点が特徴です。(※他の予備校模試では「早慶模試」のように合同で実施されることが多い)

*各模試の詳しい日程、受付開始日はこれらの記事も参考にしてください。
>> 【合格を掴む!】高校3年生の大学受験対策スケジュール<1学期~夏休み>

>> 【合格を掴む!】高校3年生の大学受験対策スケジュール<2学期~受験直前期>

3. 【受験中】模試の受験中に意識すべきポイント

模試は入試本番の練習の場でもあることを意識して、ぜひ「試験中のマイルール」を設定の上で実践してみてください。
見直し方法や選択肢に迷った時にどうするかなど、自分の中でルールを決めておくことでより効率的に試験時間を使うことができます。模試の受験中に試行錯誤するというよりは、普段の勉強時に考えたものを実践してみる場にしましょう。
「試験中のマイルール」の例や、ルールを決める際のポイントをいくつか紹介します。

・マークのつけ方:迷っている選択肢、そうでない選択肢で印を使い分ける。
・見直しの順番:もう少しで解けそうな問題・時間がかかりそうな問題など、状況を振り分けて優先順位をつける。
・二択で迷ったとき:「悩むのは〇分くらいまで」など、1つの問題に時間をかけ過ぎない。
・大問を解く順番:特に国語など、大問ごとに出題分野が固定されている教科は順番を工夫する。

特に国公立大学を志望する場合は、受験大学を決定する上で共通テストの自己採点が必須になります。
自分がどの選択肢を選んだのかが後からわかるように、解答用紙だけでなく問題用紙にも必ずマークを付けることを毎回の模試で実践し、「くせ」をつけるように心がけましょう
この時に、もし選択肢で悩んで見直しの時に解答を変更した場合も、直す前のマークを消さず矢印などで選んだ順番がわかるようにしておくと、成績表返却後の答え合わせで自分の思考を追いかけやすくなり便利です。

4. 【受験後】成績表で振り返り&解き直し

模試の受験後に返却される成績表について、情報量が多い中でも特に確認すべき項目について解説します。

【各教科の成績】
各教科(「英語」「数学」など)に加え、主要3教科の合計など複数の教科を組み合わせた項目でも、それぞれ偏差値や成績順位が表示されます。
「この教科を含むと順位が大幅に下がる」「各教科の成績は振るわないが3教科合計になるとバランスが取れて成績が良くなる」など、教科ごと・合計の成績を比べて自分の得点傾向を確認しましょう。勉強計画だけでなく、併願校選び等にも役立ちます。
苦手科目をがんばって勉強するのはもちろん大切ですが、努力して時間をかけてもどうしても成績の上がらない科目がある場合は、思い切ってその科目なしで受験できる学部を探し直すのもひとつの戦略です。

【設問別の成績】
例えば数学の「幾何学」「代数」など、どの分野が苦手なのか、1つの教科の中でも分野による得点の多寡でアンバランスな部分を見つけることができます。

【同じ大学志望者内の順位】
模試によっては、教科別・設問別に同じ大学を志望している受験生の中での成績順位も見ることができるので、必ず確認しましょう。

また、成績表を確認した後は模試の解き直しをおこなうことが大切です。実際の入試問題に近づけて作られた模試の問題は質が高いものが多く、1回だけ解いて終わりにするにはもったいない良質な教材です。
最低でも「1回以上解き直し+間違えたところは重点的に復習」のサイクルを作りましょう

*模試の解き直しについては、こちらの記事も参考にしてください。
>> 【模試活用】もう後回しにしない!効率的な模試の復習方法3ステップ

5. 模試の志望校判定について 

5-1. 判定の見方・注意点

例として、「河合模試」の共通テストにおける判定ごとの「合格可能性評価基準」を挙げます。予備校や模試の種類で若干前後しますが、各判定における合格可能性の目安になります。

A判定  = 80%以上
B判定  = 65%
C判定  = 50%
D判定  = 35%
E判定  = 20%以下

これらの評価基準はあくまで目安であり、同じ志望大学の受験者内順位などもあわせて参考にすることを心がけてください。絶対的に正しい見方が存在するというよりは、複数の情報を参考にして総合的に判断することをおすすめします。

(参考)例えば産経新聞のこちらの記事では、判定ごとの人数分布についてイメージとのギャップを紹介しています。
>> 産経ニュース:【受験ABC(2)】E判定が最多数 意外と知らない合格判定

5-2. 志望校判定とどう付き合う?

模試の判定「のみ」で志望校を変更することはおすすめしません
模試によって測ることができるのは現段階での学力であり、一番大切なのは入試本番に点数を取ること。特に私立大学の個別入試、国立大学の二次試験では、「自分の志望校の入試問題を解けるようになること」です。
大学受験では模試で測ることができるような基礎学力に加え、大学・学部ごとの出題傾向に向けた対策を十分に進める必要があります。確かに模試は自分の学力を測る上で非常に重要なツールですが、あくまで1つの指標ととらえ、志望校は志願者倍率や出題傾向との相性など、他の要素もあわせて慎重に検討しましょう
反対に、模試の結果が良い場合でも油断は禁物です。過去問演習など大学別の対策も、必ずぬかりなくおこなうようにしましょう。

6. まとめ

受験学年になると特に一喜一憂してしまいがちな模試の結果ですが、模試は「自分の限界を知るもの」ではなく、逆に足りないところを具体的に客観視できる、「自分のこれからの可能性がわかるもの」とポジティブにとらえてみてください。
大学受験模試は、ちょうどよく距離感を保って上手に活用することで、長い道のりである受験勉強の大きな助けとなるでしょう。模試の受験をマイルストーンに勉強計画を立て、入試本番に向けて着実に実力を鍛えてください。

StudiCoサポーター Y.K.
早稲田大学 文学部 合格