• 英語
  • 英語長文

英語長文読解の基礎テクニック「スラッシュ・リーディング」をマスターしよう!

2019.09.12

英語長文読解の基本テクニックとして、「スラッシュ・リーディング」という方法を知っていますか?英語長文を読んでいる内に内容がよくわからなくなり、同じ箇所を何度も読み返してしまうという人は、ぜひ身につけておきたいテクニックです。
スラッシュ・リーディングを習得すれば、英文の構成を素早くかつ正しく把握することができ、結果、速読力アップにも繋がります。知っておくのと知らないのとでは、大きな差が出るスキルですので、ここで基本的な実践法を習得しておきましょう!

1. 英語長文読解の壁になる「語順」の違い

英語の長文読解を苦手とする人は「読んでいる内容が頭に入ってこない」「長文を読むのに時間がかかりすぎる」「そもそも英語長文の読み方がわからない」といった悩みを抱えているケースが多いようです。
原因はいくつかあり、例えば、知らない単語やイディオムがたくさん出てくる、文中で用いられている文法が理解できない、といったものが挙げられます。これらは、英単語集を使った語彙力の強化や、英文法の入念な学習によって改善できます。
しかし、語彙も文法もある程度身についているのに、英文がスムーズに読めないというケースもあります。そのような場合は、英文の読み方自体についての問題を疑ってみましょう。
英文読解が難しい要因には、単に単語や文法の難しさだけでなく、英語と日本語とでは語順が根本的に違うということがあります。
例えば、次の英文と和訳を見比べてみてください。

Color is an important feature considered by consumers when shopping for various products.
(2019年度センター試験第4問Aより)
[訳]色は、さまざまな商品を購入する際、消費者によって検討される重要な特性である

太字部分に注目してください。英文の主節のV(動詞)C(補語)が、和訳(日本語)では「述語」となって文末に来ています。これは、英文法の「文型」で習うように、通常英語では文が〈S(主語)V(動詞)〉で始まるのに対し、日本語では述語が最後に来るという規則があるためです。
また、「修飾」の際にも語順は異なります。

various devices that expand our range of sight
(2019年度センター試験第6問より)
[訳]われわれの視野を拡張するさまざまな機器

このように、英語では名詞(句)をやや長めの語句または節(上の例では関係代名詞節)で修飾する場合、後ろから修飾するのに対し、日本語では通常、前から名詞(体言)を修飾します。
そのため、英語長文を読む際に逐一日本語に直して読んでいたのでは、その語順の違いからかなり時間がかかってしまうことになります。したがって、英文を英語の語順のままに理解していくのが理想ではありますが、それには相当英語に熟達している必要があります。
そこで、初学者~中級レベルの英語力であっても、「ほぼ」英語の語順通りに理解していくという方法があります。英文を意味の固まりごとに区切って、ある程度語順通りに(つまり後ろから前に戻ることなく)読んでいくという方法です。
そのためのテクニックが、スラッシュ・リーディングです。

2. 英語長文がスラスラ読める!スラッシュ・リーディングの方法

2-1. スラッシュ・リーディングのメリット

英文を日本語的な発想で読もうとすると、英語の語順とは異なる語順で理解し直す必要が生じるため、時間が余計にかかります。逆に英文を、書かれた語順にしたがって理解できるようになれば(つまり英語のネイティブと同じように読めるようになれば)、読むスピードは格段にアップしますよね。

先ほど例として挙げた英文をスラッシュ(/)で次のように区切ってみます。

Color is an important feature/ considered by consumers/ when shopping for various products.
[例訳]色は重要な特性である/ 消費者によって検討される/ さまざまな商品を購入する際。

こうすると、英文と和訳をほぼ同じ順序で読むことができます。
このように、スラッシュを入れて文章の区切りを可視化し、その区切りごとに前から順に読んでいくテクニックがスラッシュ・リーディングです。
スラッシュ・リーディングには次のようなメリットがあります。

・英語を英語的な語順のまま読めるようになる
・英語長文を読むスピードが上がる

2-2. どこで区切ればよいのか

続いて、スラッシュ・リーディングの具体的な方法についてレクチャーします。
どんな箇所にスラッシュを入れて文章を区切れば、読みやすくなるのかということに注目します。
英文中でスラッシュを入れる目印となるのは主に以下のような箇所です。

(1)句読点(パンクチュエーション)
日本語の句読点に当たるパンクチュエーション(「,」(コンマ)、「.」(ピリオド)、「:」(コロン)など)は、そもそも「区切る」ことを目的とするものですから、これらは文の区切りのサインとなります。
これらの記号自体が区切りの目印ですので、あえてスラッシュを挿入しなくてもかまいません。

(2)接続詞
接続詞にはさまざまな種類がありますが、その名の通り、文や語句を繋ぐのがこの品詞の役割です。
中でも、文と文をつなぐ接続詞や名詞節を導く従属接続詞(thatやif[whether]など)、副詞節を導く従属接続詞(when, till[until], after, beforeなど)の前は区切りやすい箇所です。

例)Japanese people take it for granted/ that trains arrive on time.
[例訳]日本人は当たり前だと思っている/ 電車が時間通りに到着することを。

(3)関係代名詞
関係代名詞は、名詞を文で修飾するために用いられ、英文を長く複雑にしている要素の代表格です。
関係代名詞を含む文を、日本語の語順に従って修飾語句から先に意味を取ろうとすると、時間がかかります。関係代名詞の前で一度文を区切って読むことで、英文の読解がスムーズになります。

例)In Asia/ there are few countries/ that recognize gay marriage legally.
[例訳]アジアでは/ 国はほとんどない/ 同性婚を法的に認めている(国は)。

(4)様々な修飾語句
関係代名詞を伴わなくても、to不定詞や分詞、副詞句などによる長い修飾語句の前も、区切る位置としては適切です。

例)They are looking for a way/ to deal with the labor shortage in rural areas.[to不定詞による後置修飾]
[例訳]彼らは方途を探している/ 地方の労働力不足に対処するための。

例)That baseball team is owned by the company/ known as an online shopping giant.[分詞による後置修飾]
[例訳]あの野球チームは会社によって所有されている/ ネットショッピング大手として知られる(会社に)。

(5)長い主語の後
主語が長くて意味のまとまりがつかみにくいような場合、主語の後にスラッシュを挿入して文を区切るのも効果的です。

例)The lawsuit against that food company/ has drawn attention from a lot of people.
[例訳]あの食品会社を相手取った訴訟は/ 多くの人の注目を集めている。

スラッシュ・リーディングの際に気を付けてほしいのは、あまり厳密になり過ぎないことです。
スラッシュ・リーディングは、英文をより速くスムーズに読むためのテクニックであり、スラッシュを入れること自体が目的ではありません。スラッシュを入れる位置に厳格なルールはありませんし、それにこだわり過ぎると、かえってタイムロスになるので注意しましょう。

2-3. スラッシュ・リーディングを練習してみよう!

センター試験で過去に出題された長文を使って、実際にスラッシュ・リーディングの練習をしてみましょう。
自分にとって読みやすくなるように適宜スラッシュを入れてみてください。

[例]
Opera is an art form that celebrates the human voice at its highest level of expression. No other art form creates excitement and moves the heart in the way that opera does, especially when performed by a great singer. Such singers are trained to present some of the greatest and most challenging music that has ever been composed for the human voice.

[センター試験2016年第6問より]

以下にスラッシュで区切った1つの例を挙げますが、これが唯一の正解というわけではありません。
参考例として、自分がスラッシュを入れた位置と比べてみてください。

[スラッシュの挿入例]
Opera is an art form/ that[関係代名詞] celebrates the human voice/ at its highest level of expression[前置詞句]. No other art form creates excitement and moves the heart/ in the way that opera does[前置詞句], [コンマ]/ especially when performed by a great singer. Such singers are trained/ to present[不定詞] some of the greatest and most challenging music/ that[関係代名詞] has ever been composed for the human voice.


[例訳]オペラは一つの芸術形態である/ 人間の声をたたえる/ 表現の最も高いレベルで。他のいかなる芸術形態も興奮を生み出したり心を動かしたりすることはない/ オペラがするようには/ とりわけ優れた歌手によって演じられる場合には。そのような歌手たちは訓練されている/ 最も偉大で最も困難な音楽のいくつかを表現するために/ これまでに人間の声のために作曲されてきた(音楽のいくつかを)。

3.まとめ

英語長文読解の基本テクニック「スラッシュ・リーディング」のポイントを振り返っておきましょう。

●英文読解独特の難しさを克服
英語と日本語とでは「語順」が根本的に違うことが「難しさ」の一因。
⇒できるだけ英語の語順通りに戻らず意味を理解していくことで、速くスムーズに英文を読解したい
⇒文中の意味のまとまりごとにスラッシュを入れて区切りを可視化し、前から順に読んでいく方法(=スラッシュ・リーディング)が有効

●スラッシュ・リーディングの方法
スラッシュを入れる位置に厳密な決まりはないが、以下の位置で区切ると英文構成を掴みやすい。

(1)句読点(パンクチュエーション)
(2)接続詞
(3)関係代名詞
(4)様々な修飾語句
(5)長い主語の後

スラッシュ・リーディングをマスターして英語長文に対する苦手を払拭し、配点の高い読解問題にも自信を持って対応できるスキルを身につけましょう。

さらに、英語長文読解の実力アップを目指したい人は、こちらの「パラグラフ・リーディング」の記事も参考にしてみてください。
>>パラグラフ・リーディングを実践!英語長文〈論説文〉を効率的に読み解くための王道テクニック