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英語リスニングの2大トレーニング法「ディクテーション」と「シャドーイング」の極意とは!?

2019.03.08

近年、大学入試でますます重要性が高まっている英語リスニング試験。大学入学共通テスト(旧センター試験)や難関大学入試で使用される英語音声は、ネイティブスピーカーのナチュラルスピードにかなり近いレベルであるため、高得点を狙うにはしっかり訓練を積むことが必要です。
この記事では、難関大学入試にも通用するリスニング力を鍛えるための2つのトレーニング「ディクテーション」と「シャドーイング」について、それぞれの具体的な練習方法と得られる効果、おすすめの参考書について紹介します。

1. 「今まではあまり勉強しなくてもリスニングはできていたのに・・・・・・」

大学受験対策と意気込む前に、少し思い出してみましょう。英語のリスニングテスト自体は、遅くとも中学1年生の頃から受けてきたことがあるのではないでしょうか。そして最初のころは、特にリスニング対策をしなくてもそれなりに点数が取れていたというケースも多いでしょう。実は、このことが現在のリスニング力向上を阻む落とし穴になっているということがよくあります。

・「高1くらいまではあまり勉強しなくてもリスニングで点が取れていたのに、高2の模試からリスニングが全然できなくなった」
・「志望校の過去問のリスニングを聞いてみたら、ほぼ全く聞き取れなくて焦った」
・「今まで勉強したことがないから、リスニングの勉強のやり方がわからない」

このような悩みは実に多いようです。これから立ち向かう大学受験、そしてそれを想定した模擬試験では、ネイティブスピーカーのナチュラルスピードかそれに近い速さの英語を聞き取る必要があります。特に「英語4技能」が重視されるようになった近年では、リスニング力の重要性は増しており、旧センター試験のリスニングも難化傾向にありました。
十分な対策を講じないと、大学入試のリスニング試験では高得点を望めません

2. リスニング力を向上させる2大トレーニング

英語リスニング対策に過度な心配は不要です。リスニング力向上に効果のあるトレーニングにきちんと取り組めば、着実に実力はついてきます。
英文法・語法や語彙の習得のためには暗記力や理解力が必要であるのに対し、リスニング上達のためには、英語音声を聞き取るという訓練を繰り返すことが重要になりす。
なかでも効果を期待できるトレーニングが「ディクテーション」と「シャドーイング」です。ここからは、それぞれの詳しい方法とトレーニングに適したおすすめの参考書を紹介します。
なお、中学校の時からずっとリスニングが苦手で今もほぼ全く聞き取れないという悩みを抱えている人は、先にこちらの記事から読んでみてください。
>> リスニングが苦手な受験生必見!「英語が聞ける耳」をつくる“耳寄り”勉強法!

2-1. ディクテーションの方法

「ディクテーション=dictation」とは、耳から入ってくる英語をそのまま書き取るというトレーニング方法です。
ディクテーションをおこなうことで得られる効果としては、主に3つ挙げられます。

(1)「自分の弱点」がわかる
ディクテーションをやると、「書き取れた部分」=「聞き取れた部分」、「書き取れなかった部分」=「聞き取れなかった部分」=「自分の弱点」というように、自分の弱点が可視化されます。これがディクテーションの最大のメリットです。

たとえば、

I can’t take it.

この太字の「t」は、直後にも「t」があるため、わずかな間(ま)が置かれるだけで発音はされません。これを音の「脱落」といいます。トレーニングを積まないと、can’tとcanの聞き分けが難しいのはこのためです。

あるいは同じ英文の、

I can’t take it

こちらの太字部分は「テイク・イット」などとは発音されず、「テイケッ(t)」とまるでひとつの単語のようにつながって聞こえます。これを音の「連結」といいます。

何度もディクテーションをするうちに、「そうか、自分が毎回聞き取れないのは音が『脱落』している部分だったんだ!」、「『ピキラ』って何のことかと思ったら、pick it upと言っていたのか!」といったように、英語の発音のしくみに関する気づきが増えていきます。

(2)リスニングに集中して取り組める
ディクテーションには「聞いた英語を書き取る」という明確な目的があるので、リスニングという作業そのものに集中することができます。聞き取れない部分はそのまま飛ばし、聞き取れた部分からどんどん書き取っていきます。やるべきことがはっきりしているので、やり方に迷わずに取り組みやすいというのが、ディクテーションの長所でもあります。

(3)正しいスペリングの習得につながる
書き取りが終わった後は、必ず解答やスクリプト(=音声を文字で記したもの)と照らし合わせて、聞き取った英語が正しく書き取れているかを一字一句確認していきます。その際、単語のスペリングや名詞の単数・複数、動詞の数(3単現のs)や時制なども徹底してチェックします。このプロセスを通じて、ディクテーションは語彙力や文法知識の補強にもなり、相乗効果を発揮します。

2-2. ディクテーションにおすすめの参考書

方法がわかったら早速実践に移りましょう。
使用する音声素材は、慣れるまでは専用の参考書・問題集を使うのが良いでしょう。おすすめするのはゼロからスタート英語を聞きとるトレーニングBOOK』(Jリサーチ出版)です。

書名に「ゼロから」とあるように、中学校レベルの簡単な語句や英文の聞き取りからスタートするので無理なく取り組むことができ、かつ最後までやり通せば大学入試に十分対応できる力まで身につくように作られています。
初めは、1音(1つの母音、1つの子音)の聞き取りから始まり、続いて単語の聞き取り、語句の聞き取りへと徐々にステップアップ、最後は長文に含まれるセンテンスの聞き取りへと至ります。使いやすいレイアウトで解説も充実しており、英文素材も楽しめるものが選ばれているので、ディクテーションの入門に最適の1冊です。

2-3. シャドーイングの方法

続いては「シャドーイング」です。
シャドーイング(shadowing)とは耳から入ってくる英語音声を、その名の通り「影」(shadow)のように追いかけて発音する練習方法です。
「音声を聞く⇒一時停止⇒自分で発音」という「リピーティング」とは異なり、「音声を聞きながらわずかに遅れて発音していく」という方法です。
なぜ「発音する」練習がリスニング力アップにつながるのでしょうか。

(1)リスニングの集中力が高まる
シャドーイングをおこなうためには、まず聞こえてくる音声を正確に聞き取らなければいけません。聞き取れなければその後に自分で発音することもできないからです。
そのためシャドーイングを実践する際は、英語を聞くための集中力を極限まで高める必要があります。したがって、今までは聞き流していたかもしれない細部にまで注意を払うことができるようになるのです。

(2)英語のスピードに慣れる
もうひとつ、実際にやってみればすぐにわかることですが、シャドーイングは「ものすごく忙しい」練習方法です。先ほど「音声を聞きながらわずかに遅れて発音していく」トレーニングと紹介しましたが、実際には「聞きながら発音し⇒発音しながら聞き⇒聞きながら発音し⇒・・・」という作業を延々と繰り返すことになるからです。初めてやってみる時には不可能だと思えるほど難しく感じられるかもしれません。
しかし、この方法に次第に慣れて習熟した頃には、ナチュラルスピードの英語に耳がついていけるようになります。そして「ただ聞けばいい」だけのリスニング試験が相対的に楽に感じられるようになるのです。

2-4. シャドーイングにおすすめの参考書

シャドーイングを始めるのに絶好の1冊としておすすめするのは、新ゼロからスタートシャドーイング 入門編』(Jリサーチ出版)です。先ほどディクテーションの参考書として紹介したものと同じシリーズの参考書です。こちらの本も、挫折することなくトレーニングが進められるように初歩的なところからスタートします。

最初は単語単位でのシャドーイングです。続いて「センテンス(文単位)シャドーイング」、「会話シャドーイング」、「長文シャドーイング」と、段階を踏んで英文が長くなっていきます。

本書を入手したら、試しに「第4部」の「長文シャドーイング」のひとつを聞いてみましょう。トレーニングを始める前なら、「これをシャドーイングするなんて絶対ムリ!」と思うかもしれません。それくらい文章が長く、スピードも速く感じられるはずです。
しかし本書でトレーニングを重ねるうちに、実際にこれができるようになるのです。
そして、本書の最後には「VOA」(=The Voice of America アメリカの国営ラジオ放送)の録音コンテンツが収録されています。参考書のために録音された音声ではなく生の英語音声です。これがシャドーイングできるようになる頃には、もはやリスニングへの苦手意識は完全に消えていることでしょう。
書名に「ゼロからスタート」とあることから、「難関大学を目指している自分には関係ないかな」と思う場合があるかもしれませんが、そんなことはありません。相当英語が得意な人でも、「第3部」以降は十分役立つトレーニングができるようなつくりになっています。使い方次第でどんな人にも役に立つ1冊といえるでしょう。

3. まとめ

この記事では、リスニング力強化のためのトレーニング、「ディクテーション」と「シャドーイング」の方法とおすすめの参考書を紹介しました。
リスニング力は文章を読んでいるだけでは向上しません。この記事を読んだら学習素材を準備して、早速トレーニングに取りかかりましょう!

岡本 眞一郎 先生(武南中学・高等学校)
1983年より都立高等学校英語教諭として、都立青山高等学校、都立戸山高等学校、都立白鴎高等学校、2014年より埼玉県立春日部高等学校、埼玉県立浦和高等学校と首都圏の進学校を歴任。2018年4月からは、埼玉県私立の武南中学校・高等学校で教鞭を執り、多くの受験生たちの指導に当たっている。