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【英作文対策】中級編 ~和文英訳攻略のための3つの視点~

2019.02.01

英作文問題は、コツをつかめば、入試において満点を取ることが可能です。きちんと対策するかしないかで、長文読解問題や他の選択肢問題よりも点差をつけやすいとも言えます。
この記事では、大学受験に向けた実践的な英作文の勉強法として、「和文英訳の攻略」をターゲットに、高得点を狙うために必要な、「英作文に必要な語彙力」、「使うべき『構文・慣用表現』を見抜く」、「英語と日本語の『主語』の違いを意識する」という3つの視点について解説します。

1. 和文英訳攻略の3つのポイント

英作文の実力アップのためには、〈英文法の正確な知識と豊富な語彙力が最も強力な武器となる〉ということを、別の記事英作文対策・スタートガイド ~これだけは知っておきたい基礎知識~の中で解説しました。
この記事では、その先のステップとして、「和文英訳」の実践的な勉強法について見ていきます。
和文英訳を攻略するためには、まず次の3つの視点を持つことから始めましょう。 

  1. 英作文に必要な語彙力とは何か
  2. 使うべき「構文・慣用表現」を見抜けるか
  3. 英語と日本語の「主語」の違いを意識しているか

1-1. 英作文に必要な語彙力とは

ボキャブラリーの豊富さは英作文の力に直結しています。使える単語・イディオムが多ければ多いほど英作文では有利です。とはいえ、ただ数だけを重視してやみくもに暗記しまくればよいというわけではありません。
重要なのは、英作文で使える語彙力を身につけることです。英単語を覚える際、英単語と日本語の語義を「1対1対応」のみで覚えている人は要注意です。

「1対1対応」とは、

dog ⇔ 犬
apple ⇔ リンゴ

のように、「dogは日本語で犬、犬は英語でdog」という、きわめて単純化した形で単語の意味を把握している状態を指します。dogやappleといった単語なら、これでもさほど問題はありませんが、次の例はどうでしょう。

talent ⇔ 才能
ride ⇔ ~に乗る

「1対1対応」の語彙力の弱さが露呈するのは、例えば次のような英作文問題に接したときです。

《例題1》
次の文を英訳しなさい。

(1) 彼女には語学の才能がある。
(2) ここから新宿まで行くには中央線(the Chuo line)に乗りなさい。

(1)では、She has…talent…language. といった、部分的な単語は思い浮かんでも、

・talentは可算名詞か不可算名詞か ⇒ 冠詞aは必要か不要か
・talentのあとに前置詞が必要なはずだが、ofかinか...

など、疑問点がいくつか残されてしまいます。
実際には、have talent inという形で「~の才能がある」という意味を表すことができますが、ここでは、より慣用的な言い回しで同じ意味を表す「have a gift forという熟語を使ってみましょう。

実際の解答例は以下のようになります。

《解答例》
(1) She has a gift for languages.

どちらを使うにせよ、冠詞「a」の有無、前置詞の違いまで知っていないと、正確な英文にはたどりつけません

(2)の解答例は以下の通りです。

《解答例》
(2) Take the Chuo line from here to Shinjuku.

こちらにおいては、「~に乗る」に対して「ride」という単語の知識しか持っていない場合、正しい英文に直すことさえできません。
get in/onを使って作文した人もいるかもしれませんが、それもここでは不適切です。get in/onは「(乗り物に)乗る、乗り込む」という「動作」を指す表現だからです。
要するに、「~に乗る」という言葉に関しては、

(馬などに)乗る ⇒ ride a horse
(車・タクシーに)乗る、乗り込む ⇒ get in
(電車・バス・船などに)乗る ⇒ get on
(特定の路線などに)乗る=~線を使う ⇒ take ~ line

という使い分けがあり、これらの使い分けができないと適切な解答ができません。
つまり、和文英訳においては、課題文の文脈に応じて、語彙を正しく運用する力が求められているということです。

1-2. 使うべき「構文・慣用表現」を見抜く

ここからは、和文英訳攻略のための2つめのポイントを見ていきます。
標準レベルの条件英作文や和文英訳の問題では、ある特定の構文や慣用表現を使うよう求められているパターンが多く見られます
この種の問題では、出題者の意図を正確に読み取り、適切な構文・慣用表現・語彙を運用することが最も重要となります。

まず、次の問題を解いてみましょう。

《例題2》
次の文の意味になるように、英文の空欄に英語を補いなさい。[A]には2語、[B]には1語の英語が入る。

なぜあなたはそんなに日本の伝統芸能に詳しいのですか。
[ A ] you are so familiar [ B ] Japanese traditional arts?

空欄補充型の部分英作文です。
この問題のポイントは、次の2点です。

[ A ]⇒「Why」以外の表現で「なぜ」を表現できるか

[ B ]⇒「~に詳しい」という熟語を正しく完成できるか

[ A ]については、日本語を見て、すぐに「Why」を使いたくなりますが、もしWhyを使うなら、
Why are you
という語順にならなければならないため、除外します。理由をたずねる疑問詞として、How comeがあったことを知っていれば、こちらはすぐに埋まります。空欄の後が、肯定文の語順(=S+V)になっていることからも、How comeが適切であることが確認できます。
また、[ B ]については、おそらく何らかの前置詞が入るということは見当がついたのではないでしょうか。では、どの前置詞かということですが、ここで、前の章でも触れた「英作文に役立つ語彙力」というキーワードが浮上してきます。
つまり、ここではfamiliarという単語を何となく知っているだけでは不十分であり、前置詞を含めて正しく運用できるかどうかが問われているのです。familiarと前置詞を組み合わせて使う用法には主に以下の2つがあります。

  1. be familiar to: ~によく知られている
  2. be familiar with: ~に詳しい、通じている

この例題では後者がふさわしいので、[ B ]にはwithが入ります。

《解答》
[How come] you are so familiar [with] Japanese traditional arts?

もう1題、別の例題を見てみましょう。こちらは完全な和文英訳問題です。

《例題3》
次の文を英訳しなさい。

遅刻の理由を説明するのに彼が言葉を費やせば費やすほど、その理由は嘘っぽく思えた。

この問題の最大のポイントは、「を費やせば費やすほど」という部分を見て、すぐに「the+比較級, the+比較級」の構文を使うということを見抜けるかどうかです。
ただ、前半部分はやや込み入っているので、パッと英訳できないかもしれません。
このような一種の倒置が起こる構文を英訳するのに迷うようであれば、まずは通常の肯定文(平叙文)として組み立ててみるのも一手です。

彼は遅刻の理由を説明するのに、多くの言葉を費やした。

まず、この部分の英作文に着手してみましよう。これだけで英訳の難易度がぐっと下がりますね。
例えば、このような英文になるでしょう。

He used many words to explain the reason for being late.

続いて、後半部分を考えますが、ここで「思えた」という部分を見て、sound / sound likeが思い浮かぶかどうかが、もうひとつのポイントです。
動詞のsoundには「〈人の話などが〉~のように思える、聞こえる」という意味がありましたね。
したがって、「その理由(=it)は嘘っぽく思えた」の部分は、次のように訳せるでしょう。

the more it sounded like a lie または
the less it sounded true など

《解答例》
The more words he used to explain the reason for being late, the more it sounded like a lie.

このように、英文和訳の問題では、英訳すべき課題文を見て、どんな構文・慣用表現を使えばよいかを見抜く力が非常に重要だということがわかります。

そして、こうした力は、文法・語法の問題集で繰り返しトレーニングを積むことで習得できるものです。

1-3. 英語と日本語の「主語」の違いを意識する

もうひとつ、英作文問題でよく問われるポイントについて解説します。

英語と日本語は、「主語」の扱い方が大いに異なる言語であり、この点を理解しているかどうかを問う英作文問題がよく出題されます。
頭に入れておきたいポイントは、次の2つです。

  1. 主語の省略
  2. 無生物主語

まず(1)ですが、英語ではほぼ常に主語を明示するのに対し、日本語では主語を頻繁に省略します。和文英訳系の英作文問題では、日本語の課題文では省略されている主語を見つけ出し、英文ではそれを明示する必要がある、というケースがしばしば見られます。
(2)の「無生物主語」は、文法・語法問題でも“常連”となっている文法事項です。
無生物(人や生き物以外のもの・こと)を主語にして、「(人を)~させる、~する」という意味の文を成すものを「無生物主語の構文」といいます。この構文では、「原因・理由・手段」などを表す語句が主語になります。
例えば、「駅まで歩いて5分だよ」という文を、英語では、

 A five-minute walk will get you to the station.

と表すことがあります。
「5分間の徒歩があなたを駅まで連れていく」というのは、日本語的な発想からは出てこない文章ですよね。
このような英語と日本語における主語の発想のちがいが、和文英訳問題の主要テーマのひとつになっています。このことを踏まえて、次の例題を解いてみましょう。

《例題4》
次の文を英訳しなさい。

この写真を見ると、5年前にパリで出会ったある男性のことを思い出します。

まず、日本語では「主語」が省略されやすいということを意識してみてください。
直接書かれてはいませんが、「ある男性のことを思い出す」のは、もちろん「私」ですよね。日本語ではあえて「私」と言わずに文意が自然に理解される場合でも、英語では代名詞(I, my, meなど)で明示する必要があります。慣れるまでは課題文に「私」を補ってみるのもコツのひとつです。

この写真を見ると、私は5年前にパリで出会ったある男性のことを思い出します。

また、この問題では、典型的な無生物主語の構文が使えることに気づきましたか?
そう、remind A of B(AにBを思い出させる、想起させる)という表現を使えば、簡潔に英訳することができますね。英訳しやすくするために、日本語の課題文を以下のように書き換えるとわかりやすくなります。

この写真は私に私が5年前にパリで出会ったある男性のことを思い出させる

解答例は以下のようになります。

《解答例》
This picture reminds me of a man I met in Paris five years ago.

2. 英作文対策におすすめ参考書

最後に、和文英訳の力を伸ばすための、おすすめの参考書を2冊紹介します。
1冊目は、英単語を「1対1対応」で覚えるのではなく、さまざまな場面・状況に合わせて使い分ける知識が身につく単語集システム英単語』(駿台文庫)です。

システム英単語 <5訂版> 必出2000+多義語180 システム英単語 <5訂版> 必出2000+多義語180
英語
英単語
システム英単語 <5訂版> 必出2000+多義語180
4.6
霜康司 刀祢雅彦
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「ミニマル・フレーズ」というのが本書の最大の特徴で、各項の見出しが、単語単独でも例文でもなく、数語程度の語句のかたまりとなっています。核となる語と共に頻繁に用いられる語(句)がセットになった最小単位(=ミニマル・フレーズ)を暗記することで、英作文に応用できる語彙力を、効率的に身につけることができます。

続いて紹介するのは『クラウン チャンクで英単語 Standard 第2版』(三省堂)です。

システム英単語 <5訂版> 必出2000+多義語180 システム英単語 <5訂版> 必出2000+多義語180
英語
英単語
システム英単語 <5訂版> 必出2000+多義語180
4.6
霜康司 刀祢雅彦
  • ほしい (7)
  • おすすめ (10)


「チャンク」という英単語の塊で覚えていく単語帳です。例えば、「薬」という単語を覚えるときに、「 take a medicine. 薬を飲む」という表現と共に覚えることができます。日本語からそのまま訳すと「drink」という単語を使いたくなるところ、チャンクで覚えることによって、正確な英語表現で英作文ができます。

もう1冊は、『ドラゴン・イングリッシュ』シリーズでおなじみ、竹岡広信先生の英作文対策本CD2枚付 決定版 竹岡広信の 英作文が面白いほど書ける本』(KADOKAWA/中経出版)です。

決定版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本 決定版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本
英語
英作文
決定版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本
5
竹岡広信/著
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  • おすすめ (3)

「主語の決定」という独立した章があり、「主語」の扱い方が詳しく解説されています。また、受験生の多くが苦手意識を抱きがちな、「時制の決定」「動詞の決定」「仮定の表現」といった重要事項を網羅している良書です。
さらに、英作文の対策本でありながら、2枚の音声CDがついてくるという音声面の充実ぶりも大きな特長。例文の暗記だけでなく、リスニング力の強化にも役立ちます。

3. まとめ

この記事では、和文英訳問題を攻略するためのポイントとして、3つの視点を紹介しました。

  1. 英作文に必要な語彙力とは何か
  2. 使うべき「構文・慣用表現」を見抜けるか
  3. 英語と日本語の「主語」の違いを意識しているか

(1)の語彙力については、「1体1対応」の単語の覚え方のみでは英作文に応用しきれないため、よく使う熟語の形や語法を正確に理解しておくことが大事だという意識を持ちましょう。
(2)の視点では、使うべき構文・慣用表現について、和文英訳問題として入試で頻出されるものを頭に入れながら、問題集で慣れていくことが効果的な対策となるでしょう。
(3)の「主語」については、主語が省略されがちな日本語に対して、英語は省略しないのが普通であるということ、課題文に隠された主語を見つけ、英文で明示する必要があるということを、まず意識しておくことがポイントです。同時に「無生物主語」の構文も使いこなせるようにすれば、苦手意識は払拭できるはず。

入試における英作文問題には、出題されるポイントが必ずあり、それを解くためのコツがあります。それさえつかめば、必ず得点できる得意分野にできると言えます。
ぜひこれらのコツをモノにし、英作文を周りに差をつけられる大学入試での武器にしましょう。